[NO.1578] 100歳まで読書/「死ぬまで本を読む」知的生活のヒント

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100歳まで読書/「死ぬまで本を読む」知的生活のヒント
轡田隆史
三笠書房
2019年11月20日 第1刷発行
261頁

さっき、ネットで見るまで気づきませんでしたが、著者轡田隆史さんは、今年の8月31日にお亡くなりになっていました。

本書ではご自分の年齢を83歳であると書かれていました。希望どおり、最後まで読書はつづけることができたのでしょうか。

P2
「はじめに」
 なぜ「一〇〇歳まで本を読む」のか?
 カンタンにいうらな、ちゃんと死にたいからだ。
「ちゃんと死ぬ」とは、どう死ぬことなのか?
 最後のさいごまで知的に、豊かに、静かに自分を保ちづづけ、自分はこの世界のなかの、どこに位置していて、どのように生きてきたか――を、それなりに納得して、死ぬことではないだろうか。
 そのためには、だれに相談するよりも、書物に相談するのがいちばんだろう。

 ◆  ◆

P15
津野海太郎さんの『百歳までの読書術』(本の雑誌社)、『最後の読書』(新潮社)をとりあげていて、ちょっと嬉しくなりました。同感です。

津野さんがリアルに紹介している、凄みをおびた先達の最後の読書は、しばらく頭から離れませんでした。

P17
 しょせんは新聞記者を半世紀やってきただけだから、いわゆる蔵書家のような立派な書物はないが、夏目漱石、永井荷風、南方熊楠、柳田國男、斎藤茂吉、折口信夫、幸田露伴、丸山眞男、丸谷才一などの全集をはじめ(以下略)

自己紹介として謙遜しておれれるみたいですが、手持ちの個人全集として、これだけの充実した内容を紹介しているので驚きました。

P54
『摘録 断腸亭日乗 』(上下/磯田光一編/岩波文庫)
『荷風全集』収録のものよりも、こちらのほうが便利だとありました。

P56
どんな本をどう読むか?
「書評」を読むのだって立派な読書だ

『思考のレッスン』(丸谷才一、文春文庫) を読めばよいとしています。

P51
『文章読本』(丸谷才一、中公文庫)

P60
 たしか、いまは亡き井上ひさしさんはどこかで『文章を書く方法』を問われたとき、ただひとこと、
「丸谷才一の文章読本を読め。おしまい」
とだけ答えていた。

P73
『絶滅寸前季語辞典』(夏井いつき/ちくま文庫)

P93
『荷風さんの昭和』(半藤一利/ちくま文庫)

荷風が亡くなったときに読んでいたのはどの本か? これには、いろいろ説があるようです。半藤さんは「最後の最後まで読んでいた洋書」と書いています。すると、それなら具体的にはどの洋書なのか?

ところが、『読書術』(「人生読本」シリーズ/昭和54年8月刊行/河出書房新社)所収の河盛好蔵「本とつきあう方法」には、「永井荷風の死の枕もとには、多年愛読した鴎外の『渋江抽斎』の頁が開かれたままであったという。(以下略)」と書かれていたのだそうです。死の直前まで読んでいたのは『洋書』なのか『渋江抽斎』なのか?

P95 『渋江抽斎』については、石川淳著書『森鴎外』(ちくま学芸文庫)で鴎外の最高傑作と評価していると紹介しています。さらに、

P95
 ところで『渋江抽斎』(岩波文庫、中公文庫)という作品は、ぼくも何度か読んできたけれど、文句なく面白い。

のだそうです。「鴎外の探索・推理の方法はまさに推理小説そのもののような、すごさだ」とまで言い切ります。P97では

『渋江抽斎』は、年を取ってからの再読、拾い読みに楽しさはきわまるのだ。
「最後の最後に読む」のにもピッタリだ!

絶賛です。上記につづけて、さらに

 荷風がいかに『渋江抽斎』に感動していたかは『麻布襍記(あざぶざっき)』(中公文庫)に収録されている「隠居のこごと」のなかで絶賛していることでもわかる。
 この文庫を読めば、荷風の核心ともいえる文章も楽しむことができる。いまは亡き須賀敦子さんの巻末エッセイもすばらしい。

このあと、『人と蔵書と蔵書印ーー国立国会図書館所蔵本からーー』(国立国会図書館編/雄松堂出版)を紹介しています。渋江抽斎の蔵書印が掲載されているとのこと。

P98.99
「それでもこれまでと違う世界の本を読もう」

永井荷風『四畳半襖の下張』(『ユリイカ 詩と批評』特集・永井荷風/1997年3月号/青土社)(文芸の本棚『生誕135年・没後55年 永井荷風』2014年9月発行/河出書房新社)
山本義隆『磁力と重力の発見〈1〉古代・中世』(みすず書房)

橋本治について

P183
『芸術新潮』2019年5月号第2特集「追悼 橋本治はなにを見たか」
東大駒場の教養学部時代からの友人、国立西洋美術館館長の馬渕明子さんが語る

『これで古典がよくわかる』(橋本治/ちくま文庫)

P201
英国の推理小説家P・D・ジェイムズ

『女には向かない職業』(小泉喜美子訳/ハヤカワ・ミステリ文庫)
『死の味』(上・下/青木久恵訳/ハヤカワ・ミステリ文庫)
『高慢と偏見、そして殺人』(羽田詩津子訳/ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

P218
『夷斎筆談』(石川淳/富山房百科文庫)


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