| 近代出版研究 第4号/特大号・特集「書物百般・紀田順一郎の世界」 近代出版研究所 著 皓星社 2025年04月16日 初版発行 409頁 |
昨年7月に亡くなった紀田順一郎さんの個人特集です。
追悼号も含め、個人の特集をうたう雑誌(ムック)は数多あれど、これほどまで満足させられた特集は、ほかになかったのではないでしょうか。
まず企画がよかったのでしょう。こいうのが読みたかったんだよなという記事ばかりです。クオリティが違うというと、ニュアンスがちょっと違うのですが。大アンケートの名前をご覧下さい。小山力也さんから山根一眞さんまで。
紀田順一郎さんの特徴はレファレンス(図書館など)をないがしろにしないところだったという指摘に、なるほどとうなずきました。組織に属さなかったこそ、の立ち位置から身についたというよりも、もともとがそうしたことも資質だったといわれれば、それにも納得です。
たしかに古本分野での「紀田順一郎の子どもたち(by アラマタ)」でも、「図書館」は抜け落ちている。コレクションとしての収集と資料としての収集の違い。
いやいや、こんなつまらないことをだらだらいってもきりがない。本書の記事は、どれもがその方向性とレベルの高さに感服するほかありませんが、とりわけ
P.224
紀田順一郎世界(ワールド)の探検法
──百科全書派の百学連環めぐり
小林昌樹
が魅力でした。
P.224
はじめに
書物の世界には三つの国がある。出版界、古本世界、そして図書館界だ。出版(新刊)の専門家、古本の専門家、図書館の専門家はそれぞれいるが、この三国を横断踏破できた書物博士は紀田順一郎先生(以下、先生)だけだと私は思う。
この「紀田順一郎世界(ワールド)の探検法」のなかで、とりわけよかった(なにが「よかった」のか、と問われても困ります)のが、 P.237 【図 3】「学会と文壇のはざまを滑走するコレクターシップの系譜」(長山靖生『おたくの本懐:「集める」ことの叡智と冒険』筑摩書房、2005) でした。これは知りませんでした。
そういえば、今ふと思い出したことに、ジャストシステムとの関係というのもありました。1992年に、ジャストシステムのかな漢字変換ソフトウェア「ATOK」の「ATOK監修委員会」の座長を務めたほどです。もちろん、現在も「ATOK」の愛用者です。
◆ ◆
特集「書物百般・紀田順一郎の世界」とは離れますが、この雑誌、ほかの記事も盛りだくさん。片山杜秀さんへの巻頭ロングインタビューには、やられました。なにしろ「古本王子」ですからね。
やっぱり柳田國男より弟、松岡静雄に という比喩にうっとり。
P.38
片:柳田國男ばっかり読んでる奴はろくでもない。松岡静雄も読まないで何が柳田國男だ!みたいな。
マイナー路線な片山さん。
子どもの頃から巨人・大鵬・卵焼きの方には行かない。
やっぱり元々、伊福部昭とか平田昭彦とかいった所からマイナー趣味なんですよ。あと近鉄バッファローズとか。
P.6
古本王子の快進撃
音楽評論家 片山杜秀ロングインタビュー
■参加者一覧
片山杜秀:音楽評論家、政治思想史家。慶應義塾大学法学部教授。
小林昌樹:近代出版研究所長。元国会図書館司書。
森 洋介:近代出版研究所員。
河原 努:近代出版研究所員・皓星社。
鈴木浩宗:国会図書館司書(憲政資料室)。
兵 務 局:古本マニア。
晴山生菜:皓星社代表。
(「小見出し」一覧抜粋)
真の古本好きはかくあるべし
リーダイを読むサラリーマン家庭に
船橋の団地に住む広告マン一家
松濤の社長さんちで「高速エスパー」を想う小学生
早熟少年、渡辺淳一や国民百科を読む
本屋にかじりついて離れない
阿佐ヶ谷の文公堂書店でバルバロッサ作戦
文庫ブームの中で
古本・貸本は小学六年まで
子ども部屋に作り付けの本棚
仙台一番街、東京中央線の大規模書店群
古本は死に至る病?
古本の道は自立の道!
古書店は本で使わずレコードで
五年生の夏休みに戦国時代マニアへと
お受験でフォルクスワーゲンに乗る
昭和少年の教養、戦争モノ
マンガ──丸尾末広はやっぱり買わないと
小学校帰りに神保町へ、そして『続群書類従』を
中学までに神保町はあちこちへ
中学からは音源収集に全力──タイマーかけてエアチェック
中高の歴史研究部で民衆に目覚める
小学生からフィルムセンター通い
演奏会にも通いつめる
矢口書店でキネ旬
大学でようやく思想史へ
兵役忌避ならぬ受験忌避──目が......目が......
下に見られた慶應の政治学科
三田には古本屋がないけれど
週末古書展(会館展)はずいぶん遅くに
神保町に近いから、と明大へ→異常行動だ!
すごく優しい蔭山宏先生→慶應回帰
チェルノブイリの頃、会館展に目覚める
目録よりその場で見る快感
図書館にないエフェメラ好み
師匠同様の雑本好きマイナー趣味
やっぱり柳田國男より弟、松岡静雄に
本の整理法
子ども部屋のコレクション
分野別と判型で
水天宮時代に階段書庫→怒られる
新天地、龍ケ崎
ちょっと分類の悪い古本屋
箱ファイリングシステム
新刊を買う文は古本に投資
研究室は満杯、なれど雑誌ひと箱揃えを
雑誌は専用の棚で
欠号手帖をなくして......ダブり買いしても、うんダイジョブ!
なんだか分からない山が増えていく
ひとの整理法は参考にしたことがない
三・一一は神保町へ向かって
徳島沈没!?
帰ってみたらCDの海
強制避難で本を遺棄?
抜き刷りの整理
整理をやめた頃
ワープロ専用機でミニコミを
同人誌の中身は
本を目方で買うライブ......本当なんだ!
龍ケ崎での棲み分け
ライナーノーツを書く材料は貴重な直撃
偶然に入手した資料を最大限に利用する手法
コレクターシップはオケージョン製
◆ ◆
P.364
隅に置けない金やん、漱石と『情史抄』
──明治書生が読んだ内藤伝右衛門の蔵版書
稲岡勝
これにはびっくり仰天でした。まるで掘り出し物の古本に出会ったときのよう。引用の図版もよろし。