都市の詩集/モダン都市文学X(10) 鈴木貞美編 平凡社 1991年4月1日 |
1920~30年代のモダニズム文学の中から、表題のように「都市」についての詩を集めてあります。本書でもっとも「カッコヨカッタ」のが、月報にある文章。
「Kit Kat と呼ばれた男」藤富保男
......彼の青年時代を振りかえってみるのもおもしろい。この十巻に出ている人では西條八十の門をたたいていたり、あるいは生田春月に詩を見てもらったと言われている。東京で下宿したときは麻布の原 石鼎の家にいたこともあった。そして、この北園という人、伊勢神宮の近くの山村出身にもかかわらず、五十年あまり三重県には帰郷せず、都会の塵芥の中で孤独にコーヒーをすすっていた詩人でもあった。余談で付け加えるならば、英米の詩の皇帝とも言われるエズラ・パウンドからKit Katの愛称で呼ばれていた北園克衛。やはり『モダン都市詩集』にはモッテコイの人だったのかも知れない。
ダダイスト新吉もぶっとんでしまいそう。
北園克衛氏が1969年、藤富氏に送ったという賀状があります。つい最近まで活動していたということも驚きです。まあ、瀧口修造なんて方もいましたが。
昭和5年に紀伊國屋から出された『エスプリ・ヌーヴォー』の表紙。平成5年ではないのです。
本書、扉で紹介されていた藤牧義夫の最期もすごい。1934年の秋から、それぞれ全長15メートルもある長大絵巻を4巻制作したのだそうです。しかも、結核を病み、貧乏のどん底にあったこの画家は、1935年9月2日に消息を断ち、その後、杳(よう)として行方が知れないのだそうです。
ほぼ、同時代に活動し、同じく行方がわからなくなったという「ボン書店」の鳥羽茂を想起させられます。
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