[NO.1530] 図書室のピーナッツ

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図書室のピーナッツ
竹内真
双葉社
2017年03月22日 第1刷発行
312頁

シリーズ全3作中の第2作目です。自分でこれまで読んできた順番では 3→1→2 となるので、これが最後となります。どうせ全部読むのなら、素直に1作目から順番に読めばよかったと、ちょっと後悔しています。まあ、どれをとっても、単独で読んで、支障はないように上手な配慮がなされているのでかまいませんが。

行きつけの公立図書館では、紹介本のコーナーに、この『図書室のピーナッツ』が、面だしで並べてありました。なぜ、シリーズのなかから、この一冊が選ばれたのか。いろいろ理由を考えてしまいました。本書の主人公だったら、さっさと気軽に司書さんへ尋ねたところでしょう。

このシリーズ自体が図書館の司書さんに好かれそうな気がします。主人公が高等学校の司書であるという理由だけでなく、まるで図書館の啓蒙を担っているかのようですから。

で、どうして全3作シリーズのなかから、これが選ばれたのでしょうか?

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出版社サイトに、大矢博子さんによる詳しい書評が掲載されています。リンク、こちら。 リードを引用

図書室で<調べる>ことが、こんなに楽しいなんて! レファレンスサービスの奥深さに触れる、ビブリオ&ライブラリアン・ストーリー第二弾。

民謡で有名な小原庄助さんのモデルを探す話や『1973年のピンボール』に出てくる「幸せとは暖かい仲間」の件を探索する謎解きでは、いよいよ磨きがかかっているようです。ちょうど北村薫さんの円紫さんシリーズを高校生版に当てはめたといっていいのではないでしょうかな。北村さんの方は、ついに「謎解き私小説」なる新境地? にまで達してしまいましたが。

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小沢健二の『うさぎ!』という本については、「第三話 ロゼッタストーンの伝言板」を読むまで、なにも知りませんでした。最初にこの「うさぎ!」という話を連載したのが、季刊誌『こどもと昔話』(小澤昔ばなし研究所刊行)だったというのも、まったく知りませんでした。この小澤昔ばなし研究所はお父さんの主宰なんだとか。オザケン、音楽で名前を聞かなくなってから、こんなことをしていたとは。

読んでいて、おやっと思ったのが、この「うさぎ!」について若森先生が特設ノートに書いた文章でした。なにしろ長いのです。ひとりの登場人物が作中で書いた(ことになっている)文章としては、近年まれにみる長さじゃないでしょうか。そういえば、昔の小説には「手紙」(による「独白」)なんてものが、ときどき長文でありましたっけ。漱石の「こころ」のような。元祖は19世紀フランスやロシアでしょうか。

この長文がなんとも熱いのです。ここでの記述によれば、若森先生は小沢健二さんと(だいたい)同世代なのだといいます。オザケンと作者竹内真さんは3歳違いくらいなので、皆さん、だいたい同世代といえそうです。若森先生の熱い思いは作者の胸中の幾ばくかと共通していて、その代弁が例の長文なのかもしれません。

それにしても、この「うさぎ!」は、罪作りなお話です。なぜなら、「うさぎ!」は小澤昔ばなし研究所刊行の季刊『こどもと昔話』に掲載された以外、本にもなっていません。その季刊誌の該当する号に当たるしか、ほかに読む方法がないのです。『図書室のピーナッツ』の作中でも、雑誌のコピー云々の記述があります。こうなると、コアな読者は意地でも読みたくなるでしょうね。ネットで検索すると、カルト的なところもあるようです。

「小沢健二のうさぎ!を読む」というサイトもありました。リンク、こちら  

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P149 どちらかといえば怠け者である主人公が、中高生の頃は暗記科目を苦手とし、国語はろくに努力をしなくても得意だったといった説明があります。その理由を自分で考えてみて、思いついたのは、「国語の読解問題などは関連情報探しみたいな一面があるからだったのかもしれない」としています。なるほど、レファレンスという作業は、読解の一部だったのかと納得しました。

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巻末には【本書に登場した本】の一覧があって、これが実に興味深いのです。本好きにとっては、これこれ! 大好物な61冊のリストです(つい冊数を、数えちゃいました)。

例のオザケン「うさぎ」関連は、次の3種を紹介しています。
【うさぎ― 沼の原篇 ひふみよ限定版】小沢健二/著 ひふみよ出版部
【うさぎ― 2010-2011】(小沢健二作品集「我ら、時」収録 小沢健二/著 ドアノック・ミュージック/制作 パルコ)
【子どもと昔話】編集・発行/小澤昔ばなし研究所

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シリーズのリンク一覧
1.[NO.1525]『図書室のキリギリス』
2.[NO.1530]『図書室のピーナッツ』
3.[NO.1506]『図書室のバシラドール』