[NO.1525] 図書室のキリギリス

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図書室のキリギリス
竹内真
双葉社
2013年06月23日 第1刷発行
336頁

学校図書館が舞台の「図書室」シリーズの第1作目。高校の図書室に勤務することになった主人公が体験する本にまつわるストーリー。主人公の視点で話をたどっていると、次から次へと書名の数々が出てくる。目を奪われっぱなし。

たまたま今年の夏に、「図書室」シリーズの3作目『図書室のバシラドール』を読んでいたので、ふーんそういうつながりだったのか、という楽しみもあったのだが、なによりも巻末に【本書に登場した本】がなかったのが残念だった。3作目にあった【本書に登場した本】は、よかったのに。

っということで、レポートの参考資料一覧でもつくるみたいな気持ちで、読み返しながらつくってみた。結構、作業をしながら迷う。ページをめくりながら、出てきた順番に書名、著者名、出版社名を調べた。「書誌」にはならないけれど、『図書室のバシラドール』にあった【本書に登場した本】の書式を参考にする。本当は本文に登場したページも明記しようかと思ったのだが、【本書に登場した本】には、なかったからいいや、と言い訳にしてやめた。

 ◆  ◆

読んでいて(読後も)幸せな気分にひたれた。悪意が出てこない。もともと本がテーマということもあって、本好きにはお勧め。『図書室のバシラドール』を読んだときから、シリーズの最初からとおして読んでみたかった。その願いとねらい(たぶん幸せな気分になれるだろうという)は的中した。

『図書室のバシラドール』のときにも感じた違和感、主人公が生まれつきもっている残留思念を感じ取ることのできる能力が本作では、さほど感じなかった。それでも、こんなSF能力は要らなかった気がするが。

もともと出版社サイトにアップされた章立てをまとめたということからか、全部で5章から成っている。読後に感じたのは、もっとゆったりとそれぞれの話がふくらませてあってもよかったかもしれない。いっぱい詰め込まれている気がした。どうしても北村薫さんの日常の謎解きものを連想してしまう。それらと比較してしまったからだろうか。違いは、こちらのほうが関連書籍の紹介数の多さがある。今回、抜き出してみて実感した。

 ◆  ◆

最後に、主人公が別れた元のご主人が書いた本で、ポリティカルな方面が飛び出してきたことに驚く。こういったジャンルの本では珍しい。よくある高校生の日常ものではない小説なんですよ、と受け止めた。主人公の上司である若森先生がときどき熱くなるところって、作者の分身(のひとつ)の側面だったりするのだろうか。

 ◆  ◆

3作シリーズのなか、最初に3作目を手に取り、こうして第1作目を読んだからには、次にはいよいよ2作目に進まなくてはならない。それが楽しみに思える。

 ◆  ◆

主人公の「なんちゃって司書」にならって、[なんちゃって]【本書に登場した本】を作ったあとで、本書の出版社サイトに[竹内真のブックトーク]なるコーナーがあることに気がついた。リンク、こちら。もちろん、作者がご自身で作成したほうがしっかり充実している。おこがましいが、こちらの作ったものと比較すると違いもある。同じ書名であっても、単行本と文庫だったり、出版社が違っていたりすることもある。どの版を選ぶのか迷った。初出の時期をふまえ、できるだけ小説のなかで触れていた条件にかなった版を選ぼうとしてみたのだが。厚かましくも、これはこれで、よしとして、載せてみることに。

そうそう、ついでに本作『図書室のキリギリス』の文庫版も見た。巻末に【本書に登場した本】が追加されているのではないかと期待したのだが、代わりに「巻末付録 竹内真のブックトーク」が掲載されていた。出版社サイトに収められたものと同じだった。


シリーズのリンク一覧
1.[NO.1525]『図書室のキリギリス』
2.[NO.1530]『図書室のピーナッツ』
3.[NO.1506]『図書室のバシラドール』


【なんちゃって版 本書に登場した本

『モーフィー時計の午前零時』ジーン・ウルフほか/著 若林正/編 国書刊行会
『イソップ寓話集』アイソポス/著 山本光雄/訳 岩波文庫
『未来イソップ』星新一/著 新潮文庫
『ヒカルの碁』ほったゆみ/原作 小畑健/漫画 ジャンプ・コミックス
『リーダーズ英和辞典』高橋作太郎/編集代表 研究社
『ハリー・ポッターと賢者の石』J・K・ローリング/著 松岡祐子/訳 静山社
『「ハリー・ポッター」vol.1が英語で楽しく読める本』クリストファー・ベルトン/著 渡辺順子/訳 コスモピア
『八犬伝』山田風太郎/著 朝日文庫
『忍法八犬伝』山田風太郎/著 徳間文庫
『南総里見八犬伝』曲亭馬琴/作 小池藤五郎/校訂 岩波文庫
『夜のくもざる』村上春樹/著 安西水丸/絵 平凡社
『パン屋再襲撃』村上春樹/著 文藝春秋
『1Q84』村上春樹/著 新潮社
『HUNTER×HUNTER』(ハンター×ハンター)冨樫義博/著 集英社ジャンプコミックス
『世界の夢の本屋さん』清水玲奈, 大原ケイ/著 エクスナレッジ
『フック』 [DVD]ダスティン・ホフマン、 ロビン・ウィリアムズ (出演)、 スティーブン・スピルバーグ (監督)
『からすのパンやさん』かこさとし/著 偕成社
『オカメインコに雨坊主』芦原すなお/著 文芸春秋
『天国はまだ遠く』瀬尾まいこ/著 新潮社
『ジャンプ』佐藤正午/著 光文社
『山田風太郎全仕事』角川書店編集部/編 角川文庫
『クマよ』星野道夫/文・写真 福音館書店
『小さな本の数奇な運命』アンドレーア・ケルバーケル/著 望月紀子/訳 晶文社
『お嬢さんは名探偵』若山三郎/著 春陽文庫
『本格ミステリー宣言』島田荘司/著 講談社
『旅をする木』星野道夫/著 文芸春秋 「十六歳のとき」
『極北の動物誌』ウィリアム・プルーイット/著 岩本正恵/訳 新潮社
『ショーシャンクの空に』 [DVD]ティム・ロビンス、 モーガン・フリーマン (出演)、 フランク・ダラボン (監督)
『ゴールデンボーイ』スティーヴン・キング/著 浅倉久志/訳 新潮文庫
『2001年宇宙の旅』 [DVD]キア・デュリア、 ゲイリー・ロックウッド (出演)、 スタンリー・キューブリック (監督、 脚本)
『2010年』 [DVD]ロイ・シャイダー、 ジョン・リスゴー (出演)、 ピーター・ハイアムズ (監督)
『69 sixty nine』 [DVD]妻夫木聡 、 安藤政信 (出演)、 李相日 (監督)
「心と手」オー・ヘンリー(『O・ヘンリ短編集(三)』O・ヘンリ/著 大久保康雄/訳 新潮文庫)
『アークティック・オデッセイ』星野道夫/著 新潮社
『ねずみとり』アガサ・クリスティー/著 ハヤカワ文庫
『2分間ミステリ』ドナルド・J・ソボル/著 武藤崇恵/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫
『少年探偵ブラウン(1)』ドナルド・ソボル/著 桜井誠/訳 偕成社文庫
『こちらマガーク探偵団』E.W.ヒルディック/作 蕗沢忠枝/訳 山口太一/画 あかね書房
『決定版 日本の野鳥「羽根」図鑑』笹川 昭雄/著 山階鳥類研究所/監修 世界文化社
『シマフクロウ』山本純郎/著 北海道新聞社
『ゆうかい犯vs空手少女(マガーク少年探偵団 15)』E.W.ヒルディック/著 蕗沢忠枝/訳 山口太一/画 あかね書房
『The Case of the Dragon in Distress (A McGurk Fantasy)』E.W. Hildick/著 Prentice Hall & IBD
『マボロシの鳥』太田光/著 新潮社
『新田次郎全集 14 アラスカ物語・氷原』新田次郎/著 新潮社
『自分の物語』HABU/著 パイインターナショナル
『1095 Includes37lyrics スガシカオ詩集』スガシカオ/著 木楽舎
『翻訳夜話』村上春樹、柴田元幸/著 文春新書
『アンのゆりかご』村岡恵理/著 マガジンハウス
『トランス』鴻上尚史/著 白水社
『藪の中』芥川龍之介/著 講談社文庫
『トリック交響曲』泡坂妻夫/著 文春文庫
『黒板五郎の流儀 「北の国から」エコロジカルライフ』倉本聡/監修 エフジー武蔵
『人間臨終図巻』山田風太郎/著 徳間文庫
『ヴァン・ゴッホ・カフェ』シンシア ライラント/作 中村妙子/訳 ささめやゆき/絵 偕成社
『グイン・サーガ』栗本薫/著 早川書房
『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉/著 小学館
『アメリ』イポリト・ベルナール/著 リトルモアブックス
『爆笑問題の日本史原論』太田光/著 宝島社
『文明の子』太田光/著 楓書店
『絵本 マボロシの鳥』藤城清治/影絵 太田光/原作・文 講談社
『オー・ヘンリー傑作選』オー・ヘンリー/著 大津栄一郎/訳 岩波文庫
『サキ短編集』サキ/著 中村能三/訳 新潮文庫
『ストーリー・ガールPart 1 上・下』L.M.モンゴメリ/作 木村由利子/訳 八田明代/画 篠崎書林
『ストーリー・ガール Part 2 上・下 黄金の道』L.M.モンゴメリ/作 木村由利子/訳 八田明代/画 篠崎書林 (ニュー・モンゴメリ・ブックス)
『オー・ヘンリー傑作集〈2〉二十年後』オー・ヘンリー/著 飯島淳秀/訳 角川文庫