本の雑誌2020年11月号 特集=出版で大切なことはすべてマンガで学んだ!

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本の雑誌2020年11月号
栗ごはん点火号 No.449
特集=出版で大切なことはすべてマンガで学んだ!
漫画を読まなくなってから久しい。読書マンガなるジャンルまでがあるとは、時代はどんどん進化しているのだった。今回の特集=「出版で大切なことはすべてマンガで学んだ!」。

●読書漫画の世界
早川さんから図書館司書まで
=中川右介

P30
「お仕事マンガ」があふれているが、当然、図書館司書を主人公にしたマンガもある。

なるほど、今やそういう状況なのだろう。「本の雑誌」で取り上げてもおかしくない出版関係の話だってあるのだ。埜納(たのう)タオ『夜明けの図書館』(双葉社)を紹介しながら、続けて

P30
最近のマンガ原作のテレビドラマによくあるパターン。石原さとみに、校閲者、解剖医、薬剤師の次としてテレビドラマで演じてほしいが、新卒で採用された設定だから、年齢的に、西野七瀬のほうがいいか。

としている。納得。あまりTVドラマに精通していなくても、理解できる。笑ってしまった。

この記事では図書館つながりのマンガを数多く紹介している。そのなかでもSFジャンル、大井昌和『すこし不思議な小松さん』(白泉社)が目を引いた。主人公(でいいのかな)の女子高生が通学バスでクラーク『都市と星』(ビギナーが読むようなレベル)を読んでいるのを温かい目で見ている。彼女はこのあと、SFの「名作を読破していく」というのだ。

SF関連で、もうひとつ。「本当に傑作」としているのが、森泉岳土『セリー』(KADOKAWA)。中川さんのいうとおり、たしかに気になる。

「朗読」をテーマにした片山ユキヲ『花もて語れ』(小学館)は、だいぶ前に、ほかでも紹介されていた。

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今こそ『どくヤン!』を読め
=北原尚彦

"ヤンキーマンガ"なのに"読書マンガ"で"ギャグマンガ"と紹介している。

『どくヤン!』
原作 左近洋一郎/漫画 カミムラ晋作/講談社のネット媒体マンガ誌「Dモーニング」に発表

紹介記事を読んでいて、とんでもない時代になったものだと感じる。

 ◆  ◆

●SF音痴が行くSF古典宇宙の旅(13)
ベイリーは宇宙最高のスーツSF小説家なのか!?
=高野秀行

連載13回にして、ついに「奇想SF]と称する世界にまで足を伸ばしてしまった。すでにSF初心者などではない。

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新刊めったくたガイド
老化メカニズムを解明する最前線の一冊
◆冬木糸一

「今月は科学書が続く」として、6冊紹介している。はじめの3冊が特に興味深かった。

『LIFESPAN(ライフスパン)老いなき世界』『眠りがもたらす奇怪な出来事: 脳と心の深淵に迫る』『「第二の不可能」を追え!/理論物理学者、ありえない物質を求めてカムチャツカへ』

冬木さんのサイトが面白い。ブログだけでなく、[note]も開設している。さすが。

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迷子の読書
筋肉の使い方から背すじの新常識まで
べつやくれい

最近、べつやくれいさんの書くものが面白い。

今回は身体の鍛え方について。「私は人並み外れた運動オンチなので」というところが目を引いた。

そうなんですよ。フィットネスとかいう記事などで紹介される内容は、みなハードルが高い気がしてならなかった。TV番組や動画サイトや書籍に掲載されているモデルの方がたは、全員が「運動オンチ」の対局にいらっしゃる人たちばかりなんです。素人の側から言わせてもらえば、そんなのはできっこないし、ましてや続けるのは至難の業としか言いようがありません。それなのに、やれ何セットやれだとか、一日に何回だとか。思わずこちらも力が入ってしまった。

P70
ただひとつ心配なのは、こういう本を読んで理屈は理解できると思うのだが、体が思った通りに動かないことだ。人並外れた運動オンチとはそういうことだ。

ただただ拍手を送りたい。で、続けて紹介しているのが次の2冊。

伊藤和磨『アゴを引けば身体が変わる/腰痛・肩こり・頭痛が消える大人の体育』(光文社新書)、山下久明『背すじは伸ばすな!/姿勢・健康・美容の常識を覆す』(光文社新書)

 ◆  ◆

●サバイバルな書物(63)
ミミズから進化5億年/こころの秘密とFさんの遺言
服部文祥(紙面に服部さんのお名前が抜けていました。あな珍しや)

いやあ、読ませる内容だった。なにしろお世話になった校正者Fさんから最後に届いたメールにあったのが、ここで取り上げた書籍だったというのだから。当然、そういった心構えで読みますわな。(ちょっとズルいかな、今回このつかみ)。まあ、それが事実だったのだから、文句はないが。今回、紹介しているのがこちら。

『人体 5億年の記憶 解剖学者・三木成夫の世界』布施英利/海鳴社/装丁・益子悠紀

三木成夫とは懐かしや。松岡正剛さんのサイト「千夜千冊」の『胎児の世界』中公新書1983 で、出会って以来。それがきっかけとなり、三木成夫さんの著作には、どっぷりはまったことがある。千夜千冊の中でも印象的な、この回のつかみは秀逸だろう。

 開口一番だった。「そうか、あなたが松岡さんですか。うーん、デボン紀ですね」。「えっ、デ、デボン紀?」「そう、顔ですよ、顔。松岡さんはデボン紀だ」。

リンク、こちら。 ホルマリン漬けになった胎児が成長順に並んでいる研究室を訪問した途端、いきなりそんなことばをかけられたら、そりゃあインパクトも大きかったことだろう。

今回、服部さんが紹介する『人体 5億年の記憶 解剖学者・三木成夫の世界』は、三木さんの亡くなったあと、残された仕事から布施さんがまとめたものだという。

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●ユーカリの木の陰で
月は綺麗......かな
◎北村薫

川島幸希『140字の文豪たち』(秀明大学出版会)を紹介している。

著者の川島幸希さんは古書の世界では有名な収集家。ツイッター「初版道」の人でもある。北村先生はPCもスマホもさわらないので、このたび ツイッター「初版道」をまとめた書籍『140字の文豪たち』が出たことによって、ついに「その画面を見られるようになった」と喜ばれている。

「月は綺麗......」とは、もちろん有名な漱石のフレーズ。川島さんは「都市伝説」なのでしょうと記しているのが「うれしい」と書く。さらに、この出どころについても

P97
「漱石とは直接関係がないので、私はあまり関心がありません」と、一刀両断。さわやかだ。

としている。

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三角窓口から
「写真と日記で気分はお散歩!?」
『八画文化会館vol.8 商店街ノスタルジア』を紹介している。ほかの号もいい。

八画文化会館 つながりで、今号の「即売会の世界」石川春菜(八画文化会館)も面白し。

『団地ブック 6号』『ゲダバキ団地観覧会』『団地の給水塔大図鑑』『団地図解』


鏡明さんも青山南さんも、そろって映画館へ行ったことを書いている。大丈夫かな? コロナ。