書かずにはいられない 北村薫 新潮社 2014年3月30日 発行 |
あとがきによれば、『読まずにはいられない』に続く1990年~2005年までのエッセイを収録とのこと。比較すると、以前にはワープロ専用機を愛用していてPCは嫌のような記述があったのに、どうもネット検索をするようになったような気がする。お子さんに依頼しているのかもしれないが。で、今やワードあたりを使っていたりして......。
■アルゲリッチについて
この正月休み、TV録画でアルゲリッチが出てくる番組を幾つか見た。
p37「天才の色合い」p41「天空の縄跳び」で、『覆面作家は二人いる』の中で主人公がアルゲリッチについて話す場面を紹介している。『覆面作家は二人いる』を読んだとき、妙にその場面が強く印象に残ったことを覚えている。作者の表現に力が入っていたのだ。1998年NHKで放映したというともさかりえさん主演のドラマは見ていないのが残念。
■p78『エリナーの肖像』
ここまで強く北村氏が紹介するなら、読んでみたくなる。
ミステリの世界で、わたしの心に刻まれた人物を一人あげるとなれば、躊躇しない。それはエリナー・メイヒューである。
短編
■p103 新聞書評 ミステリーエンターテインメント
読売新聞1995年1月
理系的作品のすごい設定 それでも責任持ってなぞを明かす
森博嗣『すべてがFになる』
■ミステリー通になるための100冊(日本編)
『この文庫が好き!ジャンル別1300冊』朝日文芸文庫 1998年7月
p133ますむら・ひろし『未来圏からの質問/文庫版あとがき』『銀河鉄道の夜』所収(扶桑社文庫)
さて、『未来圏からの質問/文庫版あとがき』の宮沢賢治の星に関する考察は素晴らしいものでした。今年(一九九五年)、一番印象に残った推理の一つです。
この本は手元に置いて何度も読み返してきたのに、当然のことながらこの部分について、ちっとも印象に残っていない。こうまで推されては、読みたくなる。
■p159〈若い人にぜひ読んでもらいたい本〉
『星を継ぐもの』J・P・ホーガン(創元SF文庫) 無条件に面白い本は何かと、考えてこれを選びました。
北村氏はた他でもびたびこの本を挙げている。それと『リプレイ』。
長編では藤村の『夜明け前』に続き、海外として『アンナ・カレーニナ』と『従姉妹ベッド』。以前、小林信彦氏が『従姉妹ベッド』を強く勧めていた。
■p196文庫の「本に関する本」では、昨年刊行の『読書談義』渡部昇一・谷沢永一(徳間書店)、一昨年刊行の『書物』森銑三・柴田宵曲(岩波文庫)も読んだ。どれも取りたい。
どちらも愛読した。
■p201二○○一年の単行本ベスト3(順不同)
『古典和歌解読 和歌表現はどのように深化したか』小松英雄/笠間書院
《日本語史研究者の立場から見ると》高校、大学で教えられていることには《デタラメが多すぎます》と始まる。そして、この本は和歌の歴史を《わかりやすく。そして、面白く叙述しようとする試み》であり、《おもしろくとは、適切な方法によって導かれた発見を楽しみながら、という意味》だ
という。
■p205ハムレット狂詩曲(服部まゆみ/光文社)
ディレッタントが蜉蝣(かげろう)のように生息しにくくなった現代日本に、服部まゆみがいる。
「ディレッタント」という言葉を最後に見てから、いったいどれくらい経ったのだろう。
■p254
思えば、学生時代、同人誌の表紙の色を選ぶ時には、衣服や車を選ぶ時には決して感じない、ときめきがありました。極論するなら、衣服や車は、わたしにとって「何でもいい」のです。前者は寒さをしのげればいいし、後者は屋根があって動けばいい。
似た表現が、他にも出てきた。わかる気がする。北村氏は運転するのか?
「~ずにはいられない」シリーズ3部作
・ [NO.1285] 『読まずにはいられない 北村薫のエッセイ』
・ [NO.1324] 『書かずにはいられない 北村薫のエッセイ』
・ [NO.1442] 『愛さずにいられない 北村薫のエッセイ』
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