[NO.1654] 古本大全/ちくま文庫

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古本大全/ちくま文庫
岡崎武志
筑摩書房
2024年01月10日 第1刷発行
425頁+3

とってもお得な一冊です。その理由がわかる、本書の成り立ちについて、冒頭に説明があります。

P.3
『古本大全』について
『古本でお散歩』(二〇〇一年)
・『古本極楽ガイド』(二〇〇三年)
・『古本生活読本』(二〇〇五年)
・『古本病のかかり方』(二〇〇七年)

 以上が品切れになったちくま文庫における私の古本に関する著作である。(途中略)

 今回、品切れとなった四冊に新稿と未収録原稿を加えて再編集し、合本として一冊にまとめることになった。(途中略)
 なお、二十年近くの懸隔を経た変化など、古びた情報についてはなるべく更新するよう心掛けたが、文章の流れ上、触らずそのままにした個所もある。(以下略)

巻末には、出典一覧として、再掲した目次に、上記4冊のどれが出典なのか、追記されています。それが3ページにわたって詳細なのです。こういうところ、オカタケさんらしさ。

 ◆ ◆ 

古本好きな老人、古本親父は薀蓄好き。ドーでもいいこと(はなし)をあれこれ、いつまでもしゃべっている。雑学の大家なんて呼ばれると嬉しそう。

薄ぼんやりとそんなことを思いながら読んでいると、「ポケット文春」紹介のところで『ヨーロッパ退屈日記』が飛び出してきたではありませんか。あれま。

P.228
(前略)ここまでは前ふり。言いたいのは伊丹一三『ヨーロッパ退屈日記』のことである。「おいおい、間違ってるよ、伊丹は〝十三〟」としたり顔をするのは、そっちこそ間違ってる。伊丹十三は最初、伊丹一三だったのだ。のちに改名。増刷時からは十三に変更されるようだが、『ヨーロッパ退屈日記』の初版は、一三時代を跡付ける重要な証拠となる。この初版には神田のN書店目録で、四千八百円がついていたのを見て驚いた。
 本書の成立については、仕掛け人となった山口瞳が文春文庫版『ヨーロッパ退屈日記』に書いた解説にくわしい。出発はサントリーのPR誌「洋酒天国」だったのだ。一度、初出と比べたことがあるが、最初はまだ「わたくし」という人称は使われておらず、文章の印象も微妙に違う。エッセイスト伊丹十三誕生という点で『ヨーロッパ退屈日記』を発行したポケット文春の功績は大きい。


ここで思い出しました。文春文庫版『ヨーロッパ退屈日記』は自分でも持っているぞ。パラフィンの掛かった古本だったので、印象に残っています。探すと、蔵書の大半が段ボール箱なのに、これは書架に横積みになっていました。きっとここ10年から20年前に古書店で買ったのではなかったかな。西荻の盛林堂か越谷のプラハ書房あたりのような。

ページを開くと、〈■B6版のためのあとがき〉に「新装版」とありました。スノッブ伊丹十三の代名詞「ジャギュア」が出てきます。薀蓄好きの古本親父とスノッブでは違いますね。笑っちゃいます。

 ◆ ◆

布川角左衛門著『本の周辺』から、〈検印だけをはがして集めたスクラップ帖三冊を、著者が古書店で見つけたことが書かれてある〉として、〈「現金の重さに匹敵する」検印で、おもしろいと思うものを抜き出して〉います。

幸田文『こんなこと』創元文庫
幸田文『驛』中央公論社
串田孫一『悦ばしき登攀』筑摩書房
古今亭志ん生『なめくじ艦隊』朋文社
飛鳥田穂洲・豊島与志雄『スポーツと冒険物語』新潮社
徳川夢声『こんにゃく随想録』鱒書房
清水崑『人物歌壇』大日本雄弁会講談社
芥川龍之介『傀儡師』旧・新潮文庫
秦豊吉『ぐっど・ないと』出版東京
丸木砂土『わが恋する未亡人』アソカ書房

自分でも、古書展で欲しい本がなかったとき、検印目当てでちょこっと買ったことがあります。

文庫本であっても、印刷された活字が若干ちぐはぐだったりするくらいの年代で、さらに翻訳小説や詩集であれば、訳者の検印が欲しくて買ったこともありました。単行本では随筆あたりだと、検印で面白そうなものと出会える確率が高かったかな。布川角左衛門さん著書からオカタケさんがわざわざ抜き出したような魅力ある検印には遠く及びませんね。

前に読んだときにも、やっぱりこの検印のところが特に印象に残っていたので、やっぱりこれが好きなんだなと自覚しました。

 ◆ ◆

それにしても、表紙のお顔、怖すぎませんか。古本屋ツアー・イン・ジャパンの小山力也さん撮影だとあります。