「顔」の進化/あなたの顔はどこからきたのか/BLUE BACKS 馬場悠男 講談社 2021年01月20日 第1刷発行 270頁 |
三木成夫氏の発生学が好きなので、どうしても顔についての興味がわいてくる。そういう視点からだと、本書はちょっと違った。
P3
本書では、動物の顔、そしてヒトの顔について、「そもそも」「なぜ」「どのように」こうなったのか、という疑問に、生物学あるいは人類学の立場から答えようとしている。
とあるので、矛盾するようだけれども。体内の各臓器や手足などと顔とのつながり、それが発生学とつなげて説明してあるのかな、と思ってしまったのでした。
P63 「図1-19 ヒトとサメの筋肉の対比」(三木成夫)は、三木氏の本で見たことがあったので、もっとこうした内容が出てくるのかと期待したのです。本書では、「第4章 ヒトの顔はどう進化したか」という章には、ヒトと動物を進化の視点から比較、論じている。
そんなニッチな先入観をもった読者以外にとっては、楽しい内容です。って、おかしな言い訳みたいだな。
「本書を書くことになった一つのきっかけ」として「日本顔学会」の活動を紹介していた。「心理学から化粧文化まで、幅広い分野にわたって「顔」を研究する会」としている。本書の特徴はこのあたりにありそう。
アカデミックでは「顔」の定義はどうなっているのだろう。本書では「顔」の定義の難しさをページのあちらこちらで見かけた。そもそも顔ってどこからどこまでかってだけでも大変そうだったし。
P128 「額」の例が挙げられている。そもそも額とは、どこからどこまでなのか。解剖学的な範囲、言語としての違い(英語と仏独語の指す範囲だって、微妙に違いがある)などなど。いやはや。額の定義だけで、こんなにも広範囲であるという例のように、「本書の扱う範囲」が、これまたきわめて広範囲なのだ。横断的といったらいいのかな。
ユニークだったのが、ここで紹介されている顔を簡略化したイラストだった。P129 「図2-16 人種ごとの顔の構造の模式図」(香原志勢『顔の本』より)にあるヨーロッパ人、アジア人、アフリカ人の3種がなんともはや。
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通読していて何度か感じたことに、「顔」とはかけ離れた内容なんだけど、へーえと思えることがときどき挿入されていたことがあった。たとえば、「さざえ堂」について。本書の扱いとしては「耳」の「蝸牛」を説明しているところで、出て来た。
P59
ちなみに、二重らせんを実感したければ、すがも鴨台(おうだい)観音堂の「鴨台さざえ堂」や、会津さざえ堂」に行くとよい。
もともと「さざえ堂」には興味があって、国内の「さざえ堂」を検索したりしていたが、灯台もと暗し、東京にあったとは。
別の例として
P122
論理能力に関しては、人類進化にともなう大脳の拡大や石器の発達などの証拠と、ノーム・チョムスキーをはじめとする認知心理学者の生成文法論との対立があり、混乱しているので、ここでは扱わない(なお、最近は生成文法理論について否定的な見解が多くなったとのこと)。
いきなり「チョムスキー」の名が出てきてびっくり。しかも、「最近は生成文法理論について否定的な見解が多くなったとのこと」だそうだ。この出典はどこなのかが、知りたくなった。
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関係ないことついでに、本書に、はさんであった「しおり」について。表面には「ちょっと休憩/ブルーバックス」、裏面は「円周率π」がずらっと記してある。講談社のTwitterに、こんなのが出ていた。リンク、こちら。
ちなみに、ブルーバックスのしおり表のパターンはかなりあります。編集部の棚を漁ったらたくさん出てきました。
何種類あるか、今度数えてみます...
「公式サイト」としてQRコードが載っていたので、スマホで読み込むと、ちゃあんと本書の著者馬場悠男さんが書いた記事が出てきた。つまり、このしおりって、それぞれ はさまれた本によって、このQRコードが違っているてことなのかな。えっ、それじゃ、出荷時に大変だよね。
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巻末、「参考文献」と「さくいん」がよかった。
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