本の雑誌2021年2月号 特集=街ノンフィクションを読め!

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本の雑2021年2月号誌 おでん白熱号 No.452 特集=街ノンフィクションを読め!

特集が「街ノンフィクションを読め!」っということで、巻頭は泉麻人さん。

P12
ノンフィクションで巡る山手線の町
●泉麻人

ご自分のホームグラウンド(いまの落合南長崎駅近辺く)の最寄り駅である目白から。さすがに全駅には触れられず。新宿がディープに走っていた。まだ、次に取り上げている60・70年代原宿のほうが読めるかな。

『表参道のヤッコさん』(高橋靖子/河出文庫)
『70'HARAJUKU』(中村のん/小学館)

下は写真集。この紹介のなかに出てくるのが原宿表参道のセントラルアパートにあったレオン。3月21日のインターFM897に松山猛さんがでていて、やっぱりレオンが出てきた。次が渋谷について。中でも泉麻人さんらしさが出ていたのが『幼年』と「狂熱の季節」のところ。

『幼年』(大岡昇平/講談社文芸文庫)
日活映画「狂熱の季節」

大岡が高等小学校に入学した大正3、4年に住んでいたのが、渋谷川に架かる稲荷橋のすぐそばだった。で、『幼年』に「十年ぐらい前まで、(稲荷の)本殿がその北二〇メートルにあったが」とあって、『幼年』の初刊が1973年だから、その「十年ぐらい前」なら1960年代初めだろうと見当をつける。そして日活映画につながる。DVD化されていない日活映画「狂熱の季節」(60年)を以前チャンネルNECOでやっていたのを録画してあったのを「チェック」すると、主演の川地民夫の「住み家」がこの一角に「設定されてい」て、ちらっと映るというのだ。マニア泉さんだな。

原稿の途中をはしょらせていただき、泉さんが最後に取り上げていた一冊。

『山手線をゆく、大人の町歩き』(鈴木伸子/河出文庫

著者は元「東京人」編集者。鈴木伸子さんには『シブいビル』なる著書もある。この書名って、ツボちゃんのタイトル風だなあ。

P20
横町歩きと酒場の空気
●藤木TDC

『あのころangle 街と地図の大特集1979』(全2巻 主婦と生活社)

いきなりなつかしい雑誌名が飛び出して驚いた。この本は1979年に発売された『別冊angle』を復刻再編集したムックだという。

P20
西井一夫・平嶋彰彦『新編「昭和二十年」東京地図』(ちくま文庫)鹿島茂『平成ジャングル探検』(講談社文庫)も横町歩きと酒場の空気を蘇らせる本である。これらの特徴は横町名やその由来などを明記している点にあり、小説などのフィクションやエッセイはそのあたりをぼかしてしまうのが私には物足りない(黒岩重吾の西成小説や半村良の銀座小説など好きなものもあるけれど)。

「小説などのフィクションやエッセイはそのあたりをぼかしてしまうのが私には物足りない」というのは、モデル問題などのトラブルを回避するために編集が対処するということだろうなあ。それだけに、この2冊は他とは違っているということか。

P30
●読者アンケート
私のおすすめ
街ノンフィクション

『写真集 シャーロック・ホームズの倫敦』(小林司、東山あかね/求龍堂)
(大方直哉・「古本屋台」の連載に小躍り社員54歳・仙台市)

P38
●SF音痴が行くSF古典宇宙の旅(16)
ディックがわからないという悪夢
=高野秀行

ディックシリーズは続きますねえ。こちらにとっては嬉しいけれど。

前回、あの『ユービック』を取り上げてくれたのには驚いた。ディックの中ではいちばん好きだったし。そこで「自分退行現象」なる新語を発明してくれた。これはなかなか優れたキーワードだ。

で、今回はディックの短編集『トータル・リコール』に「トライ」したという話。これが面白かったというのだ。

P38
映画化された表題作含め、五、六編読んだが、いやあ、面白い! プロットは緊密で展開はスピーディ、文章はウィットに富み、最後にはちゃんとオチがある。純粋にミステリやサスペンスとしてもよくできている。

これ以上の褒め言葉があるでしょうか。読んでみたくなるよね。
『トータル・リコール (ディック短篇傑作選)ハヤカワ文庫SF』(フィリップ・K・ディック/ 大森望、浅倉久志、深町眞理子訳/早川書房)

新刊めったくたガイド

P44
ごはん文学!韓国文学!
『きょうの肴なに食べよう?』
藤 ふくろう

ウラジーミル・ソローキン『マリーナの三十番目の恋』(松下隆志訳/河出書房新社3200円)
この紹介のなかで気になる別の本が出て来た。

P45
(ソローキンの『マリーナの三十番目の恋』)は、『ロマン』と同時代の初期代表作だ。『ロマン』はガイブン仲間たちの間で「人類は2種類の人間に分かれる、『ロマン』を読んだ人間と、そうでない人間だ」と言われる小説なので、同時期というだけでそわそわしてしまう。(以下略)

すごいぞ「ガイブン仲間」。しかも、この「2分される」という言い回しも久しぶりに目にした。昔、雑誌でライターさんが書いた記事に出て来たような。記憶にあるのだと、「ANJI」が弾けたらギタリスト、そうでなかったらシンガーソングライターになった」と言われたというのがあった。ここでいう「ANJI」は、ストーンズの「哀しみのアンジー」ではなくて、ポール・サイモンやバート・ヤンシュの演奏のほう。この「2分される」という言い回しは、ギターの曲だけでなく、いろいろなジャンルで使われた。今はこうした表現が廃れた。

ただでさえ翻訳小説の人気が減少しているのに、「ガイブン仲間」というのは希少価値がある。それにしても、この手の翻訳小説は値段が高い。『ロマン』は絶版とはいえ、『マリーナの三十番目の恋』の倍以上している。まあ、国書刊行会だしなあ。

P50
『私を月に連れてって』の歪みない視線にハッとする
高頭佐和子

2017年に中学生作家としてデビューし、毎年10月に田中花実親子のシリーズを発表してきたのが鈴木るりか。その新作が出た。

『さよなら、田中さん』2017
『14歳、明日の時間割』2018
『太陽はひとりぼっち』2019
『私を月に連れてって』2020

P73
広告から

『人文的、あまりに人文的』古代ローマからマルチバースまでブックガイド20講+α(著者:山本貴光 吉川浩満/本の雑誌社/ 2021.1)
『You are what you read. あなたは読んだものに他ならない』(服部文祥/本の雑誌社/2021/2)

P78
生き残れ!燃える作家年代記(22)執筆編
「スランプ」は超一流の人が
いうものでござる
●鈴木輝一郎

久しぶりにこちらの興味関心にマッチする、具体的な内容に回帰していた。本誌杉江さんからの質問「書けないときにはどうしてますか?」に答えると言う内容。これが実に具体的。

まず、書けなくなる原因を四つに分けている。

一、環境
メンタルに原因があるのなら、さっさと心療内科に行けという。酒などもってのほか。

二、健康(体調)
月に一度は鍼に行くという。
予防はハーマンミラーのアーロンチェアがいちばんだとも。「寝ている時間より椅子に座っている時間が長い」という指摘には目から鱗。新品だと15万くらいでも、事務所用品のリサイクルショップには状態のいいものが半額ぐらいであるという。
キッチンタイマーは60分ごとに伸びをするため。
ノートPCは猫背になりやすいのでデスクトップ派。
バックライトを30%ぐらいに光量を落とすことで、目の疲れを軽減。
『どんどん目が良くなるマジカル・アイ』(宝島社)は、眼筋をほぐすのに「ものすげえ効果があるので重宝して」いるという。

三、メンタル
忘れがちなのが「脳」の疲れ。

・脳の疲れがいちばんわかるは、集中力が続かなくなること
・のの疲れでわかるのは決断力が落ちること

対処法は「何もしないこと」。

寝るのもきつい場合には、ジャンクフードをどっさり買ってきて、何度も観た映画をぼーっと観る。

初めて観る映画では「ストーリー」「キャラクター配置」等をチェックする必要があってぜんぜん休めないとある。

脳の疲れをほぐすためには「一生懸命何もしない」のが重要。

以前、読んだなかに、 ウィトゲンシュタイン が執筆のあとには映画館にもぐりこんで、すでにみたことのあるストーリーもわかっているB級映画をいつも観ていたというのがあった。