[NO.1426] 面白い本/岩波新書1409

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面白い本/岩波新書1409
成毛眞
岩波書店
2013年01月22日 第1刷発行
173頁

先日、読了した『もっと面白い本』(成毛眞 著、岩波新書1468)の前に出版された書評集。読む順序が逆になってしまった。前述の本よりもちょうど1年前の出版。方針は同じく、ノンフィクションに限っている。ぴったり100冊を扱っている。

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前書きがいい。なぜ、読むのか。冒頭に、その説明がある。

p.i
ただただ、ページをめくるのが楽しい。これが読書の喜びであり、その喜びに耽溺してしまうのが本読みというものだと私は思う。

筆者のいう読書とは、けっして功利的な目的のためではない。別のところでは「読書は道楽」ともいっている。同感だ。

上記抜粋の中にある「本読み」というキーワードにも注目した。前書きの中に、もう一度「本読み」という語は使われている。

p.v
(本書で紹介している100冊を)全部読んだところで賢くなるわけではないし、何かの役に立つわけでもないかもしれない。結局、ただの本読みになるだけかもしれない。けれども、たぶん、それがいいのだ。

さあ、それでは「面白い本」の話をしていこう。

まるで、このブログサイトの中にあるカテゴリー「本のあれこれ」と同じではないか。

おやっと思ったのが、著者が小学生で、百科事典を読んでいたという件(くだり)。やはり小学生のころ、平凡社の世界大百科事典を読んでいたことを思い出し、可笑しくなってしまった。
もっとも、著者が読書の喜びに気がついた最初は『水滸伝』だったというところが違った。翻訳物は、訳者によって面白さが異なる。

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本書から、【興味をもった本の紹介】【気になった表現】をいくつか抜き出してみる。

【気になった表現】
『チェンジング・ブルー』(大河内直彦 著、岩波書店)を取り上げた紹介で、次の言葉があった。

p57
「非センセーショナリズム」

どれだけいい本であるのかを表現しているところで出てきた。前後には、「スムーズな章立て、快適なスピード感、語り口のうまさ、膨大で正確な知識、非センセーショナリズム、過不足のない図版、丁寧な注釈と索引、どれをとっても素晴らしいのひと言だ。」

いかにいい「本」であってもジャンルからいえば、ジャーナリズムという、いわゆる商業主義が主流の中にあって、この「非センセーショナリズム」に抗することはとても難しい。出版といいかえてもいいけれど、本が売れないといわれて久しいこの時代に、こうした書評集が、それも2冊目も出たということが嬉しくなってしまう。

【興味をもった本の紹介】を2冊

p68
『アンティキテラ――古代ギリシアのコンピュータ』(ジョー・マーチャント 著、木村博江 訳、文春文庫、2011年、357頁)
この本の紹介は以前にどこかで目にした記憶がある。これを読んでから、ずっと思い出しているのだが、『本の雑誌』だったかもしれない。そのときに気になり、メモしたはずなのだが、それっきりになってしまっていた。やはり、読んでみたい。

著者による紹介を要約すると。
1901年にギリシア沖で青銅製の固まりが引き上げられた。1970年になり、X線で調べられると、内部には32枚の歯車が見つかる。機械時計の発明ははるか後の14世紀。しかも、表面の歯車と内部の歯車の回転比が、天動説における地球を中心とした太陽と月の公転比と見事に一致した。歯車型のアナログ・コンピュータだったのか?

p145
『経済学 名著と現代』(日本経済新聞社編、日本経済新聞社、2007年、279頁)
どうも、経済分野は弱い。これは日本経済新聞の「やさしい経済学」欄に2007年から掲載された記事をまとめたものだという。北岡伸一解説の福沢諭吉『文明論の概略』、川勝平太解説のブローデル『地中海』、野中郁次郎のサイモン『経営行動』など。
筆者曰く、いわゆるセンスのいい「オールディーズ名盤オムニバス」を聴いているかのごとく満足できる1冊だろう。

別のところに、筆者はジャズの名盤を集める趣味をお持ちだとあった。

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書評集を読み、どれに興味をもつかは、そのときどきによって変わってくる。極端なことをいえば、体調によって左右されることさえあるかもしれない。

昔、読もうとして、そのままになっていた「トンパ文字」についての本は懐かしかったが、今は興味がわかなかった。「死海文書」については、かつて期待されたが、今やっと解明されようとしているのだという。グーグルの協力でデジタルアーカイブ化されつつあり、スマホで(トイレからでも!)原本が対訳付きで読めるのだとも。浦島太郎状態になる。

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【追記】
著者 成毛眞 読書関連の本
・[NO.1429] 実践! 多読術/本は「組み合わせ」で読みこなせ/角川ONEテーマ21 リンク、こちら 
・[NO.1424] もっと面白い本/岩波新書1468 リンク、こちら