[NO.1424] もっと面白い本/岩波新書1468

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もっと面白い本/岩波新書1468
成毛眞 著 
岩波書店 刊
2014年01月21日 第1刷発行

前作『面白い本』続く第2作目。ちなみに前作で紹介した本をすべて購入した読者がいたという。すごい。

著者は1991年~2000年にマイクロソフト日本法人の代表取締役社長。現在はHONZの代表も。

HONZと同様に小説は紹介していない。

1冊に付き1行~5行で抜粋あり。(まったくないものもあった)。
章立てで、①まずは人間から/②世界を俯瞰する/③歴史という迷宮/④アートな読書/⑤サイエンスとは謎解きだ/⑥そろえておきたい本、の6テーマに分けられている。

書名、著者名、出版社名に加え、出版年とページ数も掲載している。この2点まで紹介しているのは珍しい。

特徴的なのは、巻頭に「この本で紹介する本」として、紹介順に書名、筆者、出版社名の一覧があること。よく、巻末にあるものも目にするが、巻頭の方がなにかと便利。

中身を挙げるときりがないので、今回は自分で気になった本を。

p79
『逝きし世の面影』(渡辺京二著、平凡社ライブラリー、2005年、606頁)

(2005年に平凡社ライブラリーから再版されて)以来、600ページを超える大部であるにもかかわらず、10万部を超えるベストセラーになっている。これからも世紀を超えて読み継がれる名著であることは間違いない。

本書の著者からこれだけのほめ言葉をもらっただけの内容だろう、と思う。内容は、「江戸末期から明治初期に来日した外国人の記録を丹念に収集し、項目別にまとめ、彼らの言葉で当時の日本を記述してい」る。

河合塾の人気講師が書いた世界史の参考書
p86
『世界史劇場 イスラーム世界の起源』(神野正史著、ペレ出版、2013年、280頁)
「これ以上わかりやすくて「オタクな」イスラーム史の本は他にない、と断言できる1冊だ」と激賞。井筒俊彦ではなく、受験参考書というところが面白し。それも今の時代の。

『世界史劇場 日清・日露戦争はこうして起こった』(神野正史著、ペレ出版、2013年、334頁)
日清・日露戦争を世界史からとらえるという視点に興味をもった。

p106
『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』(スティーヴン・グリーンブラット著、河野純治訳、柏書房、2012年、400頁)
「近代思想と近代科学」の始まるきっかけとなった事件を扱っているという。キリスト教的な世界観が支配しいた中世ヨーロッパで、ルネサンスの展開に大きな影響を与えた、ルクレティウス『物の本質について』という書物を発見したボッジョ・ブラッチョリーニの顛末。ボッジョは「15世紀イタリアでローマ教皇の秘書」だったが、また「失われた古代ローマの書物の探索と筆写に情熱を燃やすブックハンターでもあった」。
15世紀イタリアのブックハンターときては、読まないわけにはいかない。

p122
『量子革命――アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突』(マンジット・クマール著、青木薫訳、新潮社、2013年、527頁)

今まだ物理学に興味がない読者であっても、本書は入手困難になる前に買って、手元に置いておくべき本だ。じっさいに読むのは数年後でもいい。縦書きで、数式は一切なし。平易なことばで手際よく、難しい量子力学の概念を説き明かしてくれる。翻訳者の青木薫さんも訳者あとがきで述べているように、"量子力学を一般向けに解説することに成功した"希有な本である。しかも、心理を探求する天才的な物理学者たちの姿を、これほど生き生きと描き出している本は他にない。

ここまでほめた紹介こそ、「本書のハイライト」。そういえば「紙はサイコロを振らない」ということばは、アインシュタインがボーアとの論争で言ったのだった。

近代経済学史決定版
p125
『大いなる探求』(シルヴィア・ナサー著、徳川家広訳、新潮社、2013年、上巻398頁、下巻358頁)
シルヴィア・ナサー曰く、「経済学とは、"豊かさの一般化"をもたらせた「資本主義」の本質を調べ、分析するための道具である。」という近代経済学の歩みを、代表的な「経済学者にスポットライトを当て、その人物が生きた時代と人物像を描きながら」浮かび上がらせていく。

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p48
良くできた本や映画は説明が難しい。つい全文を引用したくなるわけで、「まあ、黙って読めばいいじゃん」で終わらせたくなるのである。本書はそういう本のひとつだ。

蓋(けだ)し名言

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【追記】
著者 成毛眞 読書関連の本
・[NO.1429] 実践! 多読術/本は「組み合わせ」で読みこなせ/角川ONEテーマ21 リンク、こちら 
・[NO.1426] 面白い本/岩波新書1409 リンク、こちら