[NO.1399] 珈琲が呼ぶ

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珈琲が呼ぶ
片岡義男
光文社
2018年1月20日 初版1刷発行

片岡義男氏による最新刊、全45篇の書き下ろしエッセイ集。面白し。古い話が特によろし。本書を紹介している出版社サイトあり。リンクこちら。 大部にわたる内容が、これもさらによろし。サービス満点。

ちりばめられた一つ一つのエピソードが秀逸。しかし、こちらの関心をひいたのは、古いお店のこと。今時は昭和の喫茶店と称して、豪華な作りの店内を紹介した内容が多い。上野あたりの。

神保町やお茶の水界隈の喫茶店の並びが一件ずつ出てきたのには参った。筆者は打ち合わせや原稿書きに使ったのだという。うんうん、あったあったと肯きながらページをめくった。喫茶店のはしごをした店名が出てくると、懐かしくなる。
おやっと思ったのは、お茶の水駅前にあった名曲喫茶「ウィーン」の店名をあくまでも記載しないところ。複数回描写していても、店名は書かなかった。ふーん。エリカは数年前に立ち寄ったところ、すでに入れなかった。入った記憶はあるのだが、それがいつのことだったかわからないのがもどかしい。
神田界隈以外だと銀座、高田馬場等々。
最初は落丁かと思ったのが、P218~P229まで見開き5枚にわたる写真だった。聖橋から地上に出てきた丸ノ内線が見渡せるアングル。有名な場所ではある。説明を読むと、納得。

東京以外の店だと、京都でしょう。国内で最も珈琲消費量が多いというし。数々の店紹介がよろし。

珈琲との関連では音楽と映画。こうしてみると、振り返りが多いなあ。

馬場のらんぶるの詳細な説明、銀座のつげ義春を持ち出しての......。きりがない。

そういえば、早稲田松竹がきれいになっていたのを見ながら、並びの喫茶店が朽ちていたのを自分でも写真に撮ったような記憶があるのだが......。

P305~ 広瀬正の河出書房から最初に出たSF小説の単行本4冊について。新鮮だった。『マイナス・ゼロ』『ツィス』『エロス』『鏡の国のアリス』。特に『マイナス・ゼロ』の校正刷りに関わったところ、いいなあ。アメリカの戦前ヒットソングの歌詞を引用したところの間違いを指摘したという。

P328~ 「万年筆インク紙」がいい。同名の著書があった。おかげで単行本『万年筆インク紙』が読みたくなる。表紙もよさそう。