[NO.977] 東海道五十三次/岩波写真文庫187

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岩波写真文庫
岩波書店編集部 編
岩波書店
1959年2月20日

 風邪を引いて寝込んだときに読書した中の一冊。薄い写真集なので何度も見返しました。一昨年、茨城県土浦市のれんが堂古書店で購入した中の一冊。

 本書を購入した理由は芭蕉の詠んだ「梅わ可奈丸子の宿能登路ゝ汁」(うめわかな まりこのしゅくの とろろじる )で有名な鞠子の丁子屋さんについて写真が掲載されていたこと。それも昭和30年代初頭のころのものでしょう。お店の前をボンネットタイプの大型トラックが走っています。もちろん広重の有名な作品も併せて掲載されます。

 上記の句と鞠子の丁子屋さんについては、小沢昭一氏が対談の中で言及していて興味がありました。ところがその後、それがどの本であったのか、とんと思い出せないまま年月の経つばかり。ときどき思い出しては、懐旧にふけっていたものです。なんだったけ。

 本書の興味深いところは出版年。高度成長前の様子がなんともはや。「戸塚駅ちかくで」というキャプションがついている踏切写真(P15)では、人々が踏みきりの上がるのを待っている前を蒸気機関車が通過していくのですから。ドッキリです。
 なによりも素晴らしいのは、高速道路が隠す前の日本橋を近くのビルから撮影した写真。もちろん路面電車つきで。その日本橋の写真キャプションには「人口800万の大東京の都心」とありました。1千万人にはまだ達していません。なによりも、大東京の都心として「日本橋」が取り上げられているところに、時代が感じられます。今なら、さしずめ渋谷駅前、例のスクランブル交差点でしょうか。