[NO.971] 校正の散歩道

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校正の散歩道
古沢典子
日本エディタースクール出版部
昭和54年9月5日 発行

 どうやら勘違いをしていたようです。『ちょっとヘンだぞ四字熟語/お言葉ですが(10)』(高島俊男著・文藝春秋刊)の中に「古沢さんの文章は、現代口語文の文字表記の模範と言ってよい。」として本書が紹介されており手にしたのだけれど、ちっとも面白く読めなかったのです。
 よく読めば、高島氏は「現代口語文の文字表記の模範」といっているのであって、文体までそうであるとは触れておらず。早とちりでした。さらに、書かれている内容にも興味がわかないもの多し。世代による差もあるのでしょうか。

 おやっと思ったのが、p126字体の苦労」。終戦後の漢字改革についての内容です。当用漢字の字体と正字との違いについて。
 これは高島氏の常々主張している内容とも重なり合うこと。
p138
代用字を濫用するあまり、もとの意味から遠ざかっても何でも音(おん)が通じさえすればいいという傾向になるのも考えもので、絃という字が無いからとて弦楽と書き、バイオリンやチェロは、糸の方から弓を表現することに変えてもいいかもしれませんが、マンドリンやギターや、日本の琴・三味線ではおかしな感じがします。理窟を言えば、弦楽器はみな弓の弦(つる)をならしたものから発達したのだから、弦の方が正しいのだとも言えますが、そんなに何も彼も源へ溯って、現代の習慣や感覚を無視していいなら、獣を毛物、醜いを見難いと書いてもいいということになってしまいます。
 古沢氏の文章はやはらか。