[NO.812] だからどうしたというわけではないが。

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だからどうしたというわけではないが。
目黒考二
本の雑誌社
2002年10月30日 初版第1刷発行

初出 WEB本の雑誌「今週の一冊」2001年2月~2002年8月

■小田光雄『図書館逍遙』(発行編書房/発売星雲社)
p124
 中島河太郎氏についての説明に驚きました。中学生のときに愛読していたのが、中島氏によるトリックをまとめた本。残念ながら題名を失念。随分お世話になったものです。その中島河太郎氏は柳田國男研究にかけては先駆者であり、正宗白鳥研究では第一人者とされ......。それなのに柳田國男論も正宗白鳥論も書かず、研究者たちからも認められていなかったとか。なにより、中島氏当人はそれでよしとしていたのだそうです。
 そういえば、中島河太郎氏の本業ってなんなのか気にしたこともありませんでした。和洋女子大の学長も務めた方だったのですね。

■北村薫『六の宮の姫君』(創元推理文庫)
p136
 この『図書館逍遙』で紹介されていない1冊の本を取り上げてこの項を終わりたいと思う。以下略
 このシリーズは4作ありますが、もっともっと読みたかったもの。ところでこのシリーズに登場する円紫師匠のモデルって実在のかたでおられるのでしょうか。

p153
 最近では、大村彦次郎の文壇3部作、『文壇うたかた物語』『文壇栄華物語』『文壇挽歌物語』(いずれも筑摩書房)が面白かったが、1冊選ぶなら、小林勇『蝸牛庵訪問記』(講談社文芸文庫)
 未だに蝸牛庵訪問記を読んでいないのは、もったいなかったことに気づきました。

p171
 池袋で降りて、高松町の実家まで歩く途中に古本屋が何軒もある。その古本屋をまわって帰宅するのがいつものコースで、実家の居間であとは怠惰に読書するだけだった。近藤書店、夏目書房、高野書店などは、毎週のように覗いて歩いた。アーサー・ケストラー『機械の中の幽霊』(ぺりかん社)と遭遇したのもそのころで、見つけたのは夏目書房の棚だった。
 椎名町駅と大山駅との中間点という記述もあり、これでおおよその位置関係がつかめた模様。

p190
 最近、興味を持って読みふけるのはネット上の蒐集譚だ。「猟奇の哲人」「未読王購書日記」「ガラクタ風雲」を古本ネット御三家と書いたら、「幻想文学館」が抜けていますよと指摘され、今ではこの四天王ネットをしょっちゅうチェックしている。これらのネット蒐集譚が面白いのは、彼らが集めている本の中心がミステリー、SFなどの大衆小説だからということもあるが、新古書店の本の洪水の中から目当てのものを探し出すという行動形態が興味深いからでもある。四天王ネットを見るまで、そういう人たちがいることを知らなかった。古本界におけるまったく新しい世代の登場といっていい。最近話題になった喜国雅彦『本棚探偵の冒険』(双葉社)は、そういう世代の新しい報告書だろう。この著者は必ずしも新古書店探索家ではないようだが、この本に流れる気分は巻末の座談会出席者名をみるまでもなく、四天王ネットに共通している。
 書かれた年を考慮に入れれば、新古書店を回って買い集めるという人々について触れているのは感慨深いものが。