[NO.811] 読むのが怖い!/帰ってきた書評漫才~激闘編

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読むのが怖い!/帰ってきた書評漫才~激闘編
北上次郎×大森望
ロッキング・オン
2008年4月25日 初版発行

■『ディアスポラ』(グレッグ・イーガン著・ハヤカワ文庫)について、二人の対談が収められているので手にしました。それを知ったきっかけは、rinji氏blog「厘時のクラスター」から。
あと何と言っても、イーガン『ディアスポラ』への北上さんの大森解説を(読み間違えて)参考にした挑戦(の失敗)は、日本におけるイーガン受容史の中でも特筆すべきものだと思う。

笑い死ぬかと思った。

日本におけるイーガン受容史の中でも特筆すべきものだと思う」という表現にいたく同感。2007年だったか、『日本一怖い!ブック・オブ・ザ・イヤー2006/SIGHT別冊』で読みながら、笑いが込み上げててきたものです。
 同じ内容だったのですね。それでもかまいません、何度読んでも面白い。

 サブタイトルに「帰ってきた書評漫才」とあるように、こりゃあ掛け合い漫才です。豊崎由美氏との『文学賞メッタ斬り』みたい。もっとも、嗜好の噛み合わない北上氏との方が、ズレっぶりが面白い。幼児的なわがままとボケッぷりの見事な北上氏、やりますなあ。

 三省堂サイトに、昨年春の出版記念トーク&サイン会としての、お二人の写真。大森氏は感じませんでしたが、北上氏のお顔、お年を召しましたねえ。どーも、釜焚きメグロのイメージが強く残っておりまして。

 面白くてなかなか途中で止められず、朝刊を届けるバイクの音を聞いても、まだ読んでました。

p147
北上 あのさ、俺、この対談でずーっと違和感があったんだ。つまり俺が「この話、わからない」って言うと大森くんが「何でかなあ」ってぶつぶつ呟くタイプのテキストが出てくる。なんだかなあと思っていたんだけど、去年の「SIGHT」別冊「ブック・オブ・ザ・イヤー 2006」で、高橋源一郎氏が小説と物語の違いについて語っていて、俺は目から鱗が落ちた。

■ゼナ・ヘンダースン『ページをめくれば』(安野玲。山田順子・訳 河出書房新社)
p171
大森 これは「忘れられないこと」という《ピープル》シリーズの本邦初訳を含む、中村融編のゼナ・ヘンダースン傑作選です。〈ピープル〉っていうのは、遙か昔、地球に降り立った宇宙人の末裔で超能力を隠してひっそり山奥で村を作って暮らしていたりする。恩田陸の『光の帝国』の元ネタでもあるもので。これは学校ものの短編が中心なんですが。ヘンダースンお得意のほのぼのしたユーモアやファンタジーにまぎれて苦い話や怖い話も入っていて。どうでした?
北上
 略
大森 そうですね。《ピープル》のシリーズは『果てしなき旅路』と『血は異ならず』(ともにハヤカワSF文庫)ていう短編集がでています。以下略

■ロン・マクラーティ『奇跡の自転車』(森田義信・訳 新潮社)
p203
大森 この本自体もアメリカンドリームの体現で。もともとはコストのかからないオーディオ・テープでしか売ってなかった小説が、スティーブン・キングの書評で注目を集めて出版されることになり、ベストセラーになって映画化もきまったという。
北上 そういう作品がアメリカにはあるんだ? 日本にはないよねえ。
大森 アメリカでは通勤ドライブの間に朗読テープを聴く人が多いんですよ。
以下略