[NO.475] 「日本人論」再考

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「日本人論」再考
船曳建夫
日本放送出版協会
2003年11月25日 第1刷発行

 ここ数ヵ月間で読んだ中、一番面白かった本でした。「NHK人間講座」で放送した内容に手を入れたものだそうです。文章が読みやすく、再読、3読くらいしました。
 日本人が西洋に対してコンプレックスを抱くという考え方については、その昔に一世を風靡した岸田秀の考え方を思い出します。このあたりについて、どなたか言及していないのでしょうか。

 日本文化についての考察が、いろいろ想起させられました。多田道太郎から橋本治まで。高校生向けの一般教養書としても読めます。
 並行して読んだ NO.468『「坂の上の雲」と日本人』(関川夏央・文藝春秋)に、本書からの引用がありました。

目次
はじめに
第一部 「日本人論」の不安
第一章 「日本人論」が必要であった理由
日本人について考えるとは「比較」すること/日本の三つのモデル/江戸時代の「外国」/外から開けられたかのような「日本」/「日本」という物語が「日本人論」を必要とする/危機と外国--「不安」が生まれる二つの要素
第二章 「富国強兵」--日清・日露の高揚期
四冊の日本人論/書いた四人/『日本風景論』/『代表的日本人』/『武士道』/『茶の本』/共通点と相違点/そして仮説の検証
第三章 「近代の孤児」--昭和のだらだら坂
その後の四人/「日本人論」が必要とされなかった時期/四冊の日本人論--昭和のだらだら坂/『「いき」の構造』/『風土』/『旅愁』/『近代の超克』/小さなまとめ
第二部 「日本人論」の中の日本人たち
第四章 臣民--昭和憲法による民主主義的臣民
短いまえがき/戦後最初の日本人論-「しかしまた」と「ふさわしい位置」/八月一五日というのりしろ/玉音による新しい「臣民」の誕生/「抱きしめた」のは?
第五章 国民--明治憲法による天皇の国民
滅びる日本を憂うこと/「国民」の前身としての幕末浪士/文明の配電盤からのドロップ・アウトたち/漱石の「国民」を読む国民/臣民という身分と国民という機能
第六章 「市民」--タテ社会と世間
日本人が生きている世界/「兎角に人の世は住みにくい」/「世間」論の意義/古典は知られるが、読まれない/ウチとヨソ/タテとヨコ/いまある日本社会の、ここから始めること
第七章 職人--もの言わず、もの作る
日本人は職人/職人とは「生き方」/「工夫」がだいじ/一九六〇年代の変容
第八章 母とゲイシャ--ケアする女たち
『「甘え」の構造』のいま/「甘え」はよいのか悪いのか/母親という幻想の由来/母親像の変化と甘えの行方/ゲイシャというオリエンタリズム/母と芸者のマトリックス/世話(ケア)する女
第九章 サムライとサラリーマン--文と武の男たち
「高貴な野蛮人」としての武士/乃木将軍と『武士道』/今に生きるモデル/武士からサラリーマンへの変容/『ジャパン アズ ナンバーワン』--サラリーマン・モデルの陰の側面
第十章 「人間」--全てを取り去って残るもの
「人間」という名の日本人/ユダヤ人とのコントラスト/「理外の理」「法外の法」としての人間/産業革命の西と東のチャンピオン--イギリスと日本/産業革命ではなく勤勉革命/マルクスからマルサスへ
第三部 これからの日本人
第十一章 これまでに日本人論が果たした役割
三つの時期の日本人論の果たした役割/積極的で対外的な第一の時期/防衛的で、内向的な第二の時期/反省的に始まって次第に自己肯定的となった第三の時期/余技としての日本人論/留学に傷つく男、日本人論を書かない女
第十二章 これからの日本人と日本人論
「日本人論」が必要でなくなるとしたら/漱石、そして日本人論用の日本人/戦後の日本人論モデルはいま/司馬問題とこれからの日本人

参考文献
「日本人論」関連年表
あとがき