[NO.1622] 宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本 2015-2019/中公新書ラクレ 803

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宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本 2015-2019/中公新書ラクレ 803
宮部みゆき
中央公論新社
2023年11月10日 発行
279頁

二度読みしました。

一度目(パラパラと飛ばし読み)のときには、期待外れというか、たいして面白いとは思えず。書評集というからには、それもあの小説家「みやべ」さんが著者なんですから、と期待したところ、あまりにも短すぎて、これでは読み甲斐がなさ過ぎでした。見開きページの3/4くらいしかない分量のものが、たくさんあります。時代小説メインになる前の宮部さん、大好きでしたから、勝手な思い込みがあったかもしれません。

書評とはかくあるべし、とかつて丸谷才一さんから強くインプットされた者としては、これには納得できませんでした。海外の書評が、どれもそれなりに大部のものであることから、日本の書評があまりにも少ない枚数ばかりであることに苦言を呈していたものです。

ところが、二度目に読んでみると、あ~ら不思議。これが面白くて面白くて、(新書サイズの本書が手に馴染んで)巻を措く能わずでした。

宮部さんの勧める本の多くが、実際に読んでみたくなったものばかり。付箋を貼っていくと、とんでもない枚数になりました。

たんなる紹介文にとどまらず、(読者が)書店に足を運んで、その本を手にしたくさせるというのは、それだけで書評として目的を達したも同然。なにしろ、読売新聞掲載「本よみうり堂」が、初出です。新聞書評として、充分でしょう。丸谷さんのいう、「批評」とは違います。

その理由は、宮部さんが読んでみて面白かった、興味深く読めたという本を紹介しているからなのでしょう。この書評で批評をしようなんて、つゆほども考えていません。小説家宮部みゆきさんは、ご自分の好奇心のおもむくままに読書をし、満足できたものを紹介するだけでいいのですね。

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長い目次を入力していて気がつきました。それぞれの書評には、おのおの見出し(タイトル)が付けられていました。新聞書評「本よみうり堂」での方針でしょうか。新聞記事には見出しが必須とか。

そういえば、新聞記事のなかで見出し(小見出しも含む)がないのは、あったでしょうか?

SNSでいうと、『旧Twitter. X』と『ブログ』の違いが、そこにあるのだそうです。『旧Twitter. X』が普及しだしたころに見たのかもしれません。『旧Twitter. X』に慣れてしまうと、『ブログ』に入力するのが面倒に感じだしだというのです。

原因を突き詰めてみると、どうやら字数が『旧Twitter. X』の方が短くて済むからというよりも、『ブログ』で必要とされる見出し(タイトル)を『旧Twitter. X』では必要ないからではないか、ということに思い至ったとのこと。つまり、いちいち見出しを考えることに苦痛を覚える自分に気づいたといいます。(ちょっと可笑しい)。これって、だれが書いていたのだったか......思い出せません。
どうしてこんなことを思い浮かべたのかというと、本書『宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本 2015-2019』の書評は、それぞれの字数が短い分、紹介する冊数は多くなっています。そして、それぞれに、おのおの見出し(タイトル)が必ず付いているのを見たとき、これって必要だったのか? と思えてきました。

自分で興味のありそうな(だって、まだこの時点では読んではいないのですから)本を読んで、ああ面白かったなと読み終えてから、さあ紹介文を書くぞ、というとき(あるいは書き終わったとき)に、はたしてすんなり見出しって思い浮かぶものかな。タイトルって、いったん思い悩み出してしまうと、負のスパイラルに陥ってしまうことが多い気がします。違うのかな。担当編集者が知恵を出していたりして。

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【目次】

はじめに

2015年におすすめした本
『営繕かるかや怪異譚』小野不由美
『つくられる偽りの記憶/あなたの思い出は本物か?』越智啓太
『捏造の科学者/STAP細胞事件』須田桃子
『障害のある子の家族が知っておきたい「親なきあと」』渡部 伸
『進化とは何か/ドーキンス博士の特別講義』リチャード・ドーキンス
『日本発掘!/ここまでわかった日本の歴史』文化庁編
『絶対に行けない 世界の非公開区域99/ガザの地下トンネルから女王陛下の寝室まで』ダニエル・スミス
『君は嘘をつかない/地質学が読み解くノアの洪水と地球の歴史』デイヴイッド・R・モンゴメリー
『定職をもたない息子への手紙』ロジャー・モーティマー、チャーリー・モーティマー
『デブを捨てに』平山夢明
『長くなるのでまたにする。』宮沢章夫
『闇からの贈り物 上・下』V・M・ジャンバンコ
『ドクター・スリープ 上・下』スティーヴン・キング
『「音」と身体のふしぎな関係』セス・S・ホロウィッツ
『愛しのブロントサウルス』ブライアン・スウィーテク
『昭和特撮文化概論 ヒーローたちの戦いは報われたか』鈴木美潮
『ぼくの短歌ノート』穂村 弘
『エクソダス症候群』宮内悠介
『へんな生きもの へんな生きざま』早川いくを 編著
『墨東地霊散歩』加門七海
『殺人鬼ゾディアック/犯罪史上最悪の猟奇事件、その隠された真実』ゲーリー・L・スチュワート、スーザン・ムスタファ
『薬で読み解く江戸の事件史』山崎光夫
『世界の権力者が寵愛した銀行』エルヴァ・ファルチャーニ、アンジェロ・ミンクッツィ
『深夜百太郎 入口・出口』舞城王太郎
『間違いだらけの少年サッカー/残念な指導者と親が未来を潰す』
『検証 バブル失政/エリートたちはなぜ誤ったのか』軽部謙介

2016年におすすめした本
『謎の毒親』姫野カオルコ
『決戦!本能寺』伊東潤、矢野隆、天野純希、宮本昌孝、木下昌輝、葉室麟、冲方丁
『火打箱』サリー・ガードナー 著 デイヴィッド・ロバーツ 絵
『よこまち余話』木内 昇
『ネットロア ウェブ時代の「ハナシ」の伝承』伊藤龍平
『ミッドナイト・ジャーナル』本城雅人
『宇宙画の150年史/宇宙・ロケット・エイリアン』ロン・ミラー
『スポットライト/世紀のスクープ カトリック教会の大罪』ボストン・グローブ紙《スポットライト》チーム 編
『イナカ川柳』TV Bros'編集部 編
『絵はがきで楽しむ歴史散歩/日本の100年をたどる』富田昭次
『罪の終わり』東山彰良
『未確認動物UMAを科学する/モンスターはなぜ目撃され続けるのか』ダニエル・ロクストン、ドナルド・R・プロセロ
『自分の顔が好きですか? 「顔」の心理学』山口真美
『世界の不思議な音/奇妙な音の謎を科学で解き明かす』トレヴァー・コックス
『ゴジラ映画音楽ヒストリア/1954――2016』小林 淳
『大統領の疑惑』メアリー・メイプス
『新 怖い絵』中野京子
『家族のゆくえは金しだい』信田さよ子
『最も危険なアメリカ映画』町山智浩
『ぼくたちが越してきた日から そいつはそこにいた』ローダ・レビヴィーン 文 エドワード・ゴーリー 絵
『七四(ナナヨン)』神家正成

2017年におすすめした本
『恐怖の地政学/地図と地形でわかる戦争・紛争の構図』T・マーシャル
『ブルマーの謎/〈女子の身体〉と戦後日本』山本雄二
『猫俳句パラダイス』倉阪鬼一郎
『狩人の悪夢』有栖川有栖
『《統計から読み解く》都道府県ランキングvol1.2』久保哲朗
『ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち』ジョン・ロンソン
『植物はなぜ薬を作るのか』斉藤和孝
『日本ノンフィクション史』武田 徹
『ファット・キャット・アート』スヴェトラーナ・ペトロヴァ
『地中の記憶』ローリー・ロイ
『独裁者たちの最後の日々 上・下』ディアンヌ・デュクレ、エマニュエル・エシュト 編
『偽装死で別の人生を生きる』エリザベス・グリーンウッド
『チェーン・ピープル』三崎亜記
『神父さま、なぜ日本に?/ザビエルに続く宣教師たち』女子パウロ会 編
『フォークロアの鍵』川瀬七緒
『駅弁掛紙の旅』泉 和夫
『美しい日本のくせ字』井原奈津子
『科学捜査ケースファイル/難事件はいかにして解決されたか』ヴァル・マクダーミド
『拡大自殺/大量殺人・自爆テロ・無理心中』片田珠美
『湖畔荘 上・下』ケイト・モートン
『家族をテロリストにしないために/イスラム系セクト感化防止センターの証言』ドゥニア・ブザール
『ゲームの王国 上・下』小川 哲
『湖の男』アーナルデュル・インドリダソン
『嘘の木』フランシス・ハーディング
『清張鉄道/1万3500キロ』赤塚隆二

2018年におすすめした本
『アメリカ 暴力の世紀』ジョン・W・ダワー
『43回の殺意』石井光太
『オーパーツ 死を招く至宝』蒼井 碧
『ポンコツ武将列伝』長谷川ヨシテル
『それまでの明日』原 尞
『私の頭が正常であったなら』山白朝子
『炎と怒り/トランプ政権の内幕』マイケル・ウォルフ
『その情報、本当ですか?』塚田祐之
『職場のハラスメント/なぜ起こり、どう対処すべきか』大和田敢太
『鯉のぼり図鑑/おもしろそうに およいでる』日本鯉のぼり協会 編 林 直輝 文
『乗客ナンバー23の消失』セバスチャン・フィツェック
『大人の恐竜図鑑』北村雄一
『時代を語る 林忠彦の仕事』林 忠彦 写真 林 義勝 監修
『人間の偏見 動物の言い分/動物の「イメージ」を科学する』高槻成紀
『週刊文春「シネマチャート」全記録』週刊文春 編
『国宝の解剖図鑑』佐藤晃子
『「偏頭痛」からの卒業』坂井文彦
『SILENT WORLD/消えゆく世界の美しい廃墟』山田悠人
『凡人の怪談/不思議がひょんと現れて』工藤美代子
『なぜ倒産/23社の破綻に学ぶ失敗の法則』日経トップリーダー 編
『60歳からのも犬や猫と幸せにくらす本』犬と猫とシニアのくらしを考える会
『骨を弔う』宇佐美まこと
『人さらい』翔田 寛
『死者の雨/モヘンジョダロの墓標』周木 律
『ベートーヴェン捏造/名プロデューサーは嘘をつく』かげはら史帆
『ペットと葬式/日本人の供養心をさぐる』鵜飼秀徳

2019年におすすめした本
『不意撃ち』辻原登
『語り継ぐいのちの俳句/3・11以後のまなざし』高野ムツオ
『死ぬまでに一度は訪ねたい東京の文学館』増山かおり
『人を動かす「色」の科学』松本英恵
『種の起源』チョン・ユジュン
『あの子はもういない』イ・ドゥオン
『かっぱのねね子/こうの史代小品集』こうの史代
『こんな家に住んできた/17人の越境者たち』稲泉 連
『怖いへんないきものの絵』中野京子、早川いくを
『ゾンビでまなぶAtoZ/来るべき終末を生き抜くために』ポール・ルイス 著 ケン・ラマグ 絵
『インソムニア』辻 寛之
『死 文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション』東雅夫 編・註釈 玉川麻衣 絵
『アメコミヒーローの倫理学/10ん人のスーパーヒーローによる世界を救う10の方法』トラヴィス・スミス
『夜が暗いとはかぎらない』寺地はるな
『ディストピア・フィクション論/悪夢の現実と対峙する想像力』円堂都司昭
『誰そ彼の殺人』小松亜由美
『おまえの罪を告白しろ』真保裕一
『晩節の研究/偉人・賢人の「その後」』河合 敦
『ファンタジーと英国文化/児童文学王国の名作をたどる』安藤 聡
『コ・イ・ヌール/美しきダイヤモンドの血塗られた歴史』ウィリアム・ダルリンプル、アニタ・アナンド
『地獄めぐり』加須屋 誠
『21匹のネコがさっくり教えるアート史』ニア・グールド
『プルシャーク』雪富千晶紀
『長寿と画家/巨匠たちが晩年に描いたものとは?』河原啓子
『「生類憐れみの令」の真実』仁科邦男
『かわいい見聞録』益田ミリ
『ツナグ/想い人の心得』辻村深月
『死の海/「中川原海岸水難事故」の真相と漂白の亡霊たち』後藤宏行
『私は幽霊を見ない』藤野可織
『怪奇日和』ジョー・ヒル