[NO.1602] ペナンブラ氏の24時間書店

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ペナンブラ氏の24時間書店/創元推理文庫
ロビン・スローン
島村浩子
東京創元社
2017年02月10日 初版
398頁

 きっとどこかの書評に取り上げられていたのを目にしたことがきっかけで読んだはずですが、ちっともその出どころが思い出せず。まあ、いつものことではありますが。

この手の世界では、本書の感想なんぞ、すでに出尽くしていそうです。(ゲームとかグーグラーとか、いかにもマニアに好かれそう。)まったく予備知識もなく、先入観ゼロで読みだした身には、なんとも新鮮でした。まつもとゆきひろさんの作ったRubyが飛び出した時にはびっくりしました。

そして、読み進めるにあたっては予想外に手間がかかりました。手ごわくて、時間もかかりました。正直言って、作品世界内へ没入しにくかったのです。クレイ・アニメーションのような感じとでもいいましょうか。

ストーリーがこちらの予測を(いい意味で)裏切ってくれます。だって、ペナンブラ氏が元コンピュータ・オタクだったなんて思いもかけませんでした。たしかに冒頭で紹介されたように、ペナンブラ氏の古書店に置かれていたのは、「ペナンブラ(所有)の古ぼけたベージュのMacPlus」でした。それに、マンハッタンの<アンブロークン・スパイン>前でペナンベラ氏をつかまえたとき、そのピーコートのポケットから出てきたのは

・黒色の薄いキンドル
・ヌーク
・ソニーの(電子書籍リーダー)
・Kobo
・超薄型で青色をしている(弟子のグレッグが貸してくれた)試作品(プロトタイプ)

の合計5台でした。これにはあきれてしまいました。これまでのペナンブラ氏に対するイメージがくつがえされた瞬間でした。

読者は、ベナンプラ氏の風貌をいったいどのように想像しているのでしょうか。たとえば映画化するなら、俳優でいえば誰? 白状すると私の場合は「アルバート・アインシュタイン」でした。

 ◆ ◆

「ペナンブラ氏の24時間書店」の内部(特に梯子の掛かった奥地蔵書棚)は、鹿島茂さんが「子供より古書が大事と思いたい」で描いたフランスの古書店を思い浮かべていました。

 ◆ ◆

「単行本版解説」米光一成から抜粋

P388
二〇一三年度アレックス賞(全米図書館協会がヤングアダルト読者にすすめたい一般書に与える賞)の受賞作で、「村上春樹のお伽噺的なチャームと、ニール・スティーブンスンと初期ウンベルト・エーコの魔術的な小説技巧をあわせもる傑作」なんて紹介されているのだから期待するなというほうが無理。

ここを読んで納得しました。本書が読みにくかった理由が、なんとなく、へーえとわかったような気がしました。これ以上、あまり深くいいたくありませんが。

<strong> これは、まさにぼくたちのための青春冒険小説だ!!! </strong>
なあんてのは、受け付けなくなってしまったのを認めざるを得ません。いい年をしてなに言ってんの!? と言われそう。

 ◆ ◆

原作が発表されたのは2012年だとのこと。驚くしかありません。11年も前のことです。斬新!! そのうえ、本書が単行本で発売されたのが2014年だったとも。これも今から9年も前のこと。あああです。当方のPC歴は枯れ切ってます。

初めて友人に貸してもらったのはPC-8801でした。大きな外付けフロッピードライブがあったような。その後、彼から譲り受けたのがPC-8801mkIIでした。モニターは秋葉のガード下に車を横付けして買った記憶。元気でした。で、何が言いたいのかというと、ペナンブラ氏とは世代的に近いのか? いや一緒かもしれないぞとか。さすがに自分ではカセットテープへ記録したり、電話受話器を当てるカップラーは使っていません。

 ◆ ◆

【重箱の隅つつくの助】

(目を)すがめる

P162
「そりゃまたぜーんぜん(「ぜーんぜん」に傍点)驚かないな」ニールは目をすがめた

(途中略)

 ニールは眉をつりあげ、感動した顔になった。「お前がプログラムを書けるとは知らなかった」目がすがめられ、上腕二頭筋がぴくぴくと震える。思案しているんだ。

ここまで読んで、さすがに違和感を覚えました。同一ページに2度も出てきたのですから。

この場面以前にも、何度か目にしたので、その都度気になってはいました。本作全体では何回でてきたのか。数えてはいませんが、10回くらいはいっているような。この手の言葉遣いは、一度気になりだすと、どうにも抑えが効かなくなります。

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