[NO.1598] 「暗橋」で楽しむ東京さんぽ/暗渠にかかる橋から見る街

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「暗橋」で楽しむ東京さんぽ/暗渠にかかる橋から見る街
髙山英男吉村生
実業之日本社
2023年01月31日 初版第1刷発行
175頁

なかなかにマニアックな内容。巻末の参考文献もいい。この参考文献で目にしなければ、『杉並区管内特別区道橋梁位置図』杉並区 などという資料のことを知ることもなかったでしょう。

そもそも暗渠(あんきょ)なるワードが広まったのは、日本坂道学会副会長を務めるタモリあたりが貢献しているのでしょうか。本書の著者お二人は、この暗渠(元々、水が流れていた川や水路、その流れを地下に映してしまったもののこと)についての著書があります。

「その暗渠に架かる、あるいは架かっていた橋」=「暗橋」をテーマとして、新たに一冊を上梓しました。

本書は全体が2部構成になっていて、前半が「第1部 歩いて愉しむ「暗橋さんぽ」編」、後半は「第2部 暗橋を理解する「暗橋資料」編」になっています。カラー写真(古い写真は白黒のまま)とカラー地図が多数用意された散歩コースは、どれも魅力的です。

第1部 歩いて愉しむ「暗橋さんぽ」編
●暗橋散策モデルコース<渋谷・銀座・浅草・深川>
①パワーの源泉を探る 渋谷川さんぽ
 参考距離:約3.5km
 最寄り駅:JR山手線渋谷駅→JR総武線千駄ヶ谷駅
②銀座で橋づくし銀ブラさんぽ
 参考距離:約3.5km
 最寄り駅:JR山手線有楽町駅→東京メトロ東西線茅場町駅
③ぐるり浅草・暗橋さんぽ
 参考距離:約5.8km
 最寄り駅:東京メトロ銀座線田原町駅→東京メトロ日比谷線三ノ輪駅
④人情のまち深川でメタリック暗橋さんぽ
 参考距離:約3.5km
 最寄り駅:東京メトロ東西線木場駅→深川江戸資料館
●東西南北暗橋探訪<葛飾・北烏山・六郷・板橋>
・東 葛飾区・平和橋通り 暗橋ドラゴンクエスト
 参考距離:約4.9km
 最寄り駅:JR総武線新小岩駅→京成本線堀切菖蒲園駅
・西 北烏山 暗橋密集地帯を行く
 参考距離:約4.5km
 最寄り駅:京王線千歳烏山→京王井の頭線久我山駅
・南 六郷用水 ゴージャス暗橋さんぽ
 参考距離:約4.5km
 最寄り駅:京急本線雑色駅→途中、電車にてワープ→JR東海道線蒲田駅
・北 板橋区、北端に埋もれる宝物を探しに
 参考距離:約4.0km
 最寄り駅:都営三田線志村三丁目駅→都営三田線西台駅

 ◆ ◆

第2部 暗橋を理解する「暗橋資料」編 から

読み物として面白かったのが「なみだ橋とはなにか」でした。「なみだ橋」は、あしたのジョーに出てくる「泪橋」だけではありません。いやはや。

研究者の特性なのでしょう。分類が目につきます。そして、事例の列挙。

「石橋供養塔」という石塔があります。23区内から23が選ばれ、ずらっと写真が掲載されています。ちなみに、これは廃橋供養のためではありません。

P90
 架橋が終わった時、その橋の上で法会(ほうえ)を設け、供養を行う。橋を利用する人々の安全と、洪水で流出することのないよう神仏の加護を得るため、そして橋が末永く使われるようにという祈りが込められている。橋は精魂の宿る神聖な場所と考えられていたので、疫病や災いが橋を渡って村に入ることを防ごうともした。

つまり橋の始まりの式典が橋供養だったといいます。なるほど、結界です。

 ◆ ◆

江戸時代の図絵と古地図から橋を紹介するところは、なんとも魅力的でした。

出版社サイトに目次があった! と思いきや、微妙なところが違っているのです。リンク、こちら 
たとえば、第1部と第2部の章立てがなかったり、第2部の節の命名が違っていたり。もしかすると、企画書の案では、このサイトの内容だったのでしょうか。