シスター探偵ボニファス 制作:2021年 イギリス 脚本:ジュード・ティンドール 原題:Sister Boniface Mysteries AXNミステリー独占 第7回目 |
海外ドラマ『シスター探偵ボニファス』を見ていて、おかしなことが気になってしまいました。
ブラウン神父シーズン1で登場し、事件解決をアシストしたシスター・ボニファスを主人公とした、ブラウン神父のスピンオフシリーズ!
というのがこの『シスター探偵ボニファス』というドラマ。『ブラウン神父シーズン1』以来、どちらもファンになりました。その第7回目を見ていたときのことです。
06分45秒~ 主人公シスター探偵ボニファスが自分のラボで手掛かりとなる土壌を顕微鏡で調べる場面
主人公が扱っている光学顕微鏡は、オーソドックスなタイプ。これの使い方は小学生の理科の授業で習いました。おそらく今でも中学の理科で、定期試験に出るような基礎的なことじゃないでしょうか。ネットで調べると、小学5年理科の学習内容にありました。
【シスター・ボニファスが操作していた様子でへんてこだったところ】
1. 顕微鏡の向きがまったく逆。アームの側を手前にすべきところを、前後逆の正反対に置いて操作しています。上から見て180度、ぐるっと回さなきゃ。
この向きで操作すると、取り入れるべき光源を自分の身体で遮断してしまうので、レンズをのぞいても暗くて何も見えなくなってしまいます。
光源のためにステージ下に据えてある反射鏡の役割なんぞ、まったく眼中にないみたい。これじゃ真っ暗で、なにも見えません。 もしかして、この時代にすでに電球を光源にしているタイプ? 現在使われている主流の顕微鏡には、自前で光源を装着してあります。すると自然光は不要ですから、顕微鏡を覗く向きは正反対(つまりシスター・ボニファスと同じ向き)になります。顕微鏡の形状は違うのでひと目で判別できます。ついでに、NHK放送 アニメ はなかっぱ「ぼく、ミドリムシ」の回に出てきたカット画像を添付しました。顕微鏡のアームは手前(胸元)に置いて、ピント調節をしています。ところで、ドラマ『シスター探偵ボニファス』の時代設定は、古き良き1960年代ではなかったでしたっけ?
2. 接眼レンズを差し込んでいない。この状態で、いったい何を見ようというのでしょうか? ぽっかり空いた鏡筒に直接、目を近づけていました。最初は、理解できませんでした。接眼レンズはどこだ? と何度もさがしてしまいました。やっぱりありません。倍率を考えて、自分で選んだ接眼レンズを差し込まなくては使えません。
3. 調べたい土が入ったシャーレを直接ステージに置く。古典的なタイプでは使っているはずのプレパラートのことを考えてもいないようです。対物レンズで底のガラスを割ったら大変だし、厚いガラスで見え方がゆがまないか心配。
あまりのことに、びっくりしました。3. のシャーレは別にしても、この場面を見て、ドラマ制作スタッフのだれも気づかなかったのでしょうか? まるっきり前後逆の向きに顕微鏡を置いて、しかも接眼レンズを差し込んでない、たんなるスカスカの穴をのぞきこんでいるのですよ。手はしっかり焦点あわせのネジを回していました。いくら演技とはいえ、真っ暗な筒の底以外、なにも見えていないのじゃないかな。中学生に成り立て、中学1年生の最初の1学期中間試験に出るようなことじゃないかな。
この主人公は専門的な知識を有しているという設定です。たとえていうなら、映画007のスパイが、自動式拳銃に弾倉を装着しないまま、銃口を自分に向けて引き金を引くみたいな違和感をおぼえました。
AXNミステリーの番組ページでは、次のように彼女を紹介しています。リンク、こちら。
科学が得意で法科学的証拠をテストするラボを持ち、なんとMI5からのお誘いも断ったこともあるという、優秀な経歴を持つ
いくら設定が1960年代だろうと、光学顕微鏡の使い方なんて、野口英世のころから変わりません。
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ベストセラーになった谷本真由美さんの『世界のニュースを日本人は何も知らない』シリーズによれば、彼の国の公立学校では、体育の授業が日本とは大違いで、プールがないのは当たり前。陸上競技のハードルなんぞ、だれも本物を見たことがないのだとか。日本ではどこの学校でも、校庭の隅にある小屋みたいな中に(石灰まみれかもしれないけれど)、かならず保管されているでしょう。
すると、もしかして、理科の授業でこんな光学顕微鏡なんぞに触れることは、当たり前じゃない? ハード・オフなどリサイクルショップには、(子供用で小型だけど)2台くらいは数百円で並んでいました。小学生の夏休み自由研究の方が、残念ながら彼女よりもレベルが高いかもしれません。
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登場人物のぴりっとしながらもユーモアがある会話が好きでした。それだけにこうしたディテールをないがしろにされては、だいなし。
今でもファンであることに、かわりはありません。北欧の硬質ミステリードラマを見たあと、ゆったりできる貴重なシリーズなだけに、がっかり。
【重箱の隅つつくの助】
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