特集は「文体は人生である!」

本の雑誌2022年3月号 
No.465
葉わさび深呼吸号 
特集:文体は人生である!

今回の特集は「文体は人生である!」。いいぞ、いいぞ。かつて、「(作家や文筆家は)その人の文体を手に入れたときから化けることができる」というフレーズをどこかで目にしたような。

本特集、のっけから「(p12)文体が合う本は読んでいて気持ちいい。」と宣言されている。そうなんですよ。小説だろうが、評論、エッセイ......、どんなジャンルであれ、文体の気持ちよさは重要です。逆にいえば、どんな名作だろうと、文体が我慢できないと、受け付けることができないという現象が起こりうるのですよ。具体例としては吉本隆明の文章全般。あのひらがな表記された単語が出てきた段階で、こちらの読むリズムが解体してしまいます。漢字かな交じり文のリズムです。司馬遼太郎の小説も苦手です。小説以外のものはどれも普通に読めるのに、名作といわれる一連の小説群はどれも受け付けることができません。

p16
昭和軽薄体とはなにか
●嵐山光三郎
「なつかしいねえ」からはじまる。たしかになつかしかった。椎名誠『さらば国分寺書店のオババ』が昭和54年。嵐山光三郎『チューサン階級の冒険』が昭和52年。そういえば、嵐山さんは「笑っていいとも」の増刊号で毎週、編集長と呼ばれてレギュラー出演していたなあ。

p18
●椎名誠インタビュー
シニカルな軽薄体
浜本編集長との対談。これでほとんど「昭和軽薄体」出現前後と全盛期のことは言い尽くされているような。

p24
●文章読本読み比べ
文体カタログから実践的文章術まで
●永江朗

集めたり、文章読本。

1.谷崎潤一郎『文章読本』
2.丸谷才一『文章読本』
3.川端康成『新文章読本』
4.三島由紀夫『文章読本』
5.中村真一郎『文章読本』
6.井上ひさし『自家製 文章読本』
7.鶴見俊輔『文章心得帖』
8.本多勝一『日本語の作文技術』

7と8が、実際に書くにあたり役立ったという。7は未読。

p28
文体が感じられるブックガイド・世界文学編
自由奔放な文体の喜び
●牧眞司

レーモン・クノーの『文体練習』とカート・ヴォネガット・ジュニア『スローターハウス5号』(1973年当時はハードカバー版でタイトル『屠殺場5号』だったとしている)の2冊が紹介されている。

ここで、牧さんが挙げている『文体練習』の版が目をひいた。1996年刊の朝日出版社版とは違う。([NO.1336] 文体練習

レーモン・クノー『文体練習』(松島征・原野葉子・福田裕大・河田学訳、水声社《レーモン・クノー・コレクション》)

面白実験小説のチャンピオンにしてウリポ(潜在的文学工房)の創始者、クノー

SFからここまで到達! と驚いた。

ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』(鴻巣友季子訳、河出書房新社《世界文学全集》)。自由間接話法

ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』(高松雄一・丸谷才一・永川玲二訳、集英社文庫)

古川日出男訳『平家物語』(河出書房新社《日本文学全集》)を「独特の文体による音楽的な小説」と呼ぶ。