角川武蔵野ミュージアム 所在地:埼玉県所沢市東所沢和田3丁目31-3 ところざわサクラタウン 休館日:毎月第1・第3・第5火曜日(祝日の場合は開館・翌日閉館) |
埼玉県所沢市の角川武蔵野ミュージアムへ。電車に乗るのは実に1年半ぶり。サイトには予約がどうとかあったので、緊急事態宣言が解除されたし混んでいるかと思って電話してみると、窓口でチケットは購入できるとのことでした。
開業した当初はTVでも取り上げられていたので興味があったけれど、1970年代にメディアを席巻した(見てから読むか、読んで方見るか......ってやつとか)あの角川商法を知っている身としては、同じ雰囲気を感じて、なんとなく足が遠のいていました。隈研吾さんによる建物がメインに取り上げられたところなんか、いかにもキャッチーでかつての角川を思わせてくれたし。
それがおやっと思うようになったのは、松岡正剛さんの名前を目にしたことがきっかけだったかな。どうやら館長になったとか。館内にあるどーんと吹き抜けの巨大な書棚のデザインは、かつての松丸本舗を想起させてくれるのです。TVで紹介された書棚をちらっと見てから、本好きとしてはこれはぜひとも行ってみたいと思っていました。春樹さんではなくて、歴彦さんだったし。
本棚劇場と命名された書棚の面白さは、松岡正剛さんだけでなく荒俣宏さんのコーナーにも広がっていました。さらに角川源義文庫、山本健吉文庫、竹内理三文庫、外間守善文庫のコーナーもあります。もっとも双眼鏡でも使わないかぎり、あまりにも高い位置にあるので背表紙の全部は読めないけれど。
ここで思い出したのが東洋文庫ミュージアムにあったモリソン書庫。圧巻という点ではモリソン書庫だったけれど、趣旨が違いますね。こちらの本棚劇場は本を手にとって読むことができるのですよ。椅子もふんだんに用意されているし。さすがに上記個人文庫は高い位置で手が届かないけれど、そちらだって予約すれば読めるのだとのこと。館内の撮影もOKというのは他のところと違います(動画とフラッシュは駄目)。
正剛さんの棚に並ぶ本を手にしていると、奥付の日付が軒並み2019年というのが多いことが気になりました。どうやら開館に合わせて書店で購入したのでしょう。たまーに古い日付のものも混じっているので、余計に気になりました。『昔日の客』(関口良雄著、夏葉社刊)なんて、復刻されたそのときに買わなければ......と慌てたものでした。それなのに、新しい刷りが書棚に並んでいるのですよ。この本が新刊で入手できることにびっくり。人文書でも似たようなことがありました。
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今回のいちばん面白かった展示は、古い有刺鉄線の展示物でした。場所は4F荒俣ワンダー秘宝館の奥。四角な額縁に10種類の有刺鉄線が貼り付けられたもので、いかにもヨーロッパの蚤の市あたりで並んでいそうなしろものです。(もっとも額縁が妙に新しそうなのが気になりましたが)。それぞれの有刺鉄線には年代が印字されたラベルが添付されています。1868年~1889年でした。
かつて林丈二さんの本に凝っていたとき、有刺鉄線の種類について知ったのではなかったかな。海外ではフェンスの編み目にいろいろな種類があって面白い。けれども、さらに有刺鉄線にはもっと奥行きが深いものがあるのだとか。頭がくらくらした記憶が残っていました。系統は異なるものの、植草甚一さんが治安の悪いかった1970年代のマンハッタンをうろうろして、側溝に落ちているゴミの写真ばかりを膨大な枚数撮影してきたという逸話に通じるような。どうしてこんなことを思い出したのかというと、ヨーロッパを歩いていて、毎日靴底に貼り付いていた小石を帰宅した宿で集めたコレクションのことが気になっていたからです。昔のキャラバンシューズのような靴底からはがした小石が透明な小瓶に日付ごとにずらりと並んだコレクションはすごかったので。
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