ひとりぼっちを笑うな/角川oneテーマ21 蛭子能収 角川書店 2014年08月15日 初版発行 229頁 |
出版された当時、話題になったんじゃなかったかな。芸能ニュースによれば、去年、認知症になったとか。もともとが自然体だったからこそ、いつまでもそのままの姿勢でいられるのでしょう。
一読しようとして、その前に、目次を見てへーえと手がとまる。小見出しに「人生の目標は死なないこと」。なるほどなあ、生物の条件(定義)というのを見たことがあったけれど、それでいえば代謝にあたるのかななどと一瞬考えてしまった。そんな面倒なことを脇においておいても、「死なないこと」とはまた、なんとも人をくった言い方だよね。死なないことが究極の目標だなんて、いかにも蛭子さんらしい。
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前書きを読んだだけで、ライターさんが代筆したことが伺える。いかにもライターさんが書きそうな文体だし、文章がなんか違う。そもそも目次を見れば、そんなことはわかるだろうと言われそうかもしれない。そういう視点で読むと、なるほどこうやって一冊の本をライターさんは書くんだな、と納得させられた。なにしろ、有名人の出した、いかにも代筆です、という本は、これまでに読んだことがなかったので、ちょっと新鮮だった。奥付に、取材構成として3名のお名前がありました。
論旨が一貫していないのに、面白く読めてしまう。蛭子さんというキャラクターが読者をひき付けるからだろうか。いやはや。
なにしろ、結論ともいうべき終章(第四章)のまとめに、ひとりぼっちよりも大事なこととして、
P225
ひとりぼっちでいることをけっして笑うことなく、そんな自分を微笑みながらいつでも受け止めてくれる人を見つけること。
と書いてしまうのです。再婚した奥様の存在があってのひとりぼっちなのだそうですよ。あれま。
他にもところどころ、どう考えても賛成しかねる意見もあるのに。「空気」を読めと言われるいまの時流とは別のところで生きているる蛭子さん。それをちょっとうらやましいと思う人が多いのだろうな。蛭子さんみたいな人って、親せきに必ずいたような気がする。おじさんとかで。身内にいられたら大変なんだけどさ、みたいな。
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蛭子さんが自分を評しているところをいくつか抜粋すると
時間を自分の思いどおりに使えて、自由なことができる。P138
マイペースで楽天的。P192
子どものころから僕は、いまと変わらず自由気ままにしているのが好き。P326
他人のことを気にする必要はない。P327
本書のタイトルに関連する考え方をまとめてしまえば、「群れることが嫌い」ということだろう。
それと、「仕事」についての考え方。(P166)
「仕事」は、自由を得るために必要な「お金」を得る手段だ。そのためには苦手でも平気でできてしまう。人見知りな蛭子さんが、仕事と割り切ると、ダスキンの飛び込み営業だってできたのだという。昔は、みんなそんなものだったと言われそう。
P166
僕からすると、「仕事は自己表現する場」なんていう思想は、よく理解できないかもしれない。それよりもなによりも、自分の自由時間のほうがよっぽど大事。その自由のために、働いていると言っても過言ではありません。
こんな言い回し、蛭子さんはしそうにないけれど。
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一見するとぽつんとしているみたいだけれど、じつは人込み、繁華街が好き、というところにも納得。P176
飛び込みで雀荘に入るのが好きだというところも、なるほどなあ。この人が属する世代というのもあるかもしれない。
「今の時代は生きづらくない」(P120)というのも、さもありなん。
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『日本尊厳死協会』に入っているという。P219
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ノンポリという言葉
読んでいて違和感があった。すると、そのことを指摘しているブログがあった。そうだったんだ、と納得する。こちらが正しかったらしい。本が間違っていたとは。
「ノンポリ」とは、本来、「政治運動に参加しない」という意味だったはずなのに。ここでは「ポリシーのない」=「自分(信念)をもっていない」という意味で使っている。そういえば、蛭子さんなら、「ポリシー」という言葉を使いそう。でも、蛭子さんが間違えることはなさそう。世代から考えて、『ガロ』投稿者の蛭子さんは、若い頃、耳にしていただろうな。
取材構成をした人たちとKADOKAWAの校正を含む編集が、ノンポリという言葉を知らなかったということか。politicalであることが嫌われる時代に、「ノンポリ」を理解するのは難しかったのかもしれない。今や死語なんだ。
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