[NO.1535] 作家刑事毒島

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作家刑事毒島
中山七里
幻冬舎
平成28年8月10日 第1刷発行
323頁

先日、たまたま同名のTVドラマを見た。それが途中からだったので、どんな話だったのか知りたくなり、原作を読んでみた。ウリは主人公の毒舌にあるという。ところがどうにも毒舌に思えない。こちらの感覚がおかしいのかと考え込む。

主人公が刑事を辞めた理由は、取り調べ直後に容疑者が自殺してしまったことだとあった。なんでもそれだけ主人公の取り調べが過酷だったというのだ。もちろん、過酷だったのは言葉だけである。相手の嫌がることを瞬時に見つけ、そこをえぐるように突く才能は天性のものとか。ところが、亡くなった容疑者への取り調べはともかく、第1章から最後の五章まで本書の毒舌とされる内容に、どこにもそのような要素が感じられなかった。亡くなった容疑者への取り調べは、時間が長かったとか、別の要素が原因だったのではないかとさえ思えてしまう。

あはは、と笑ってしまうしかない。どうやらこちらの感覚が主人公並なのかと納得する。

第四話に登場した辛口オトメなる人物の書くネット書評にどうも似てきた。

ベストセラー作品を「こきおろす」だけが辛口オトメのネット書評だ。本は図書館から借りて済ませる。蔵書もない。実生活では、「いち派遣社員に過ぎず、自分の意見や主張を聞いてくれる者など誰もいない」。蔵書と派遣社員を除けば、こちらも変わらない。いや、自分は作品に点数など付けておらんぞ、などと重箱の隅をつつきそうになる。

TVドラマは単発だった。シリーズ化はないのか。