本の雑誌2020年10月号 柿の実とてちてた号 No.448 特集=この机がすごい! |
今回の特集=この机がすごい!には、でも負けた。ここに取り上げられている編集者たちの机(とその周囲)は、もっとすごいことになっていた。しかも、彼らは会社の机なのだ。つまり隣人がいるということになる。すごい机の持ち主たちが口をそろえて言うことに、お隣さんの温かい配慮(遠慮)への感謝があった。どう考えても甘えているとしか思えないけど。
可笑しかったのが沢野ひとしの記事「机の上をピカピカにするマル秘方法」。写真には何もものがない机が映っている。「ひと昔前までは夜は酒瓶が並び、己の才能のなさを嘆き、飲んだくれていた」とある。片付けのコツとして上げているのがよかった。「さっさと五分でやる」「さらに五分動く」「とにかく机の上に何も置かず、まっさらの状態にしておく」という。
P20
あったら便利だからと卓上にカレンダーや筆立て、スマートフォンの充電器、電子辞書、老眼鏡、ホチキス、セロテープ、メモ用紙、別れた妻の写真、耳カキ、付箋、風邪薬と何でも置いている人。そんなものはただの悲しい癖だ。
(途中略)
だが忘れてはならないことは、きれいな机からは心に残る作品が生まれたためしがないことだ。
最後の締めの言葉が沢野サンらしい。
P21
KADOKAWA 学芸ノンフィクション編集部 麻田江里子さんの「自分の机がなくなった」も印象深い。去年から会社の机がなくなったというのだ。自分専用の机ではなく、コワーキングスペースのようになってしまった。
それまで「魔机派」だったという彼女の変化が綴られている。何度も読み返してしまった。身につまされる。結論として挙げているのは、「要は慣れだ」とのこと。
P22
開高先生の「生命の水」
◎坪松博之
開高健にとって「生命の水」とは大槻文彦の『言海』のこと。ちなみに現在は国立国会図書館でデータベース化されている。検索もできるが、やっぱりPDFでページをめくって読めるのもありがたい。ちくま文庫もあるし、日本の古本屋で買うこともできる。これが現代の進化なのだろうか。
もっとも、今回の坪松博之さんのテーマは辞書のことではない。開高健が亡くなったときのことを綴った臨場感あふれる随筆になっている。私小説かもしれない。ページ末でぴたりと文章が収まっている。うまい。
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P72
マガジン多誌済々
荻原魚雷イズム
下井草秀
『中年の本棚』(荻原魚雷著、紀伊国屋書店刊)を取り上げている。新刊。
あわせて、今年6月刊行のミニコミ誌「些末事研究」第5号の特集〈荻原魚雷 方法としてのアナキズム〉を紹介している。鶴見俊輔や山本夏彦との交流が書かれているという。荻原魚雷さんって、すごいな。
この雑誌、ネット販売中心だけれど、古書音羽館などにも置いてあるという。[daily-sumus2]にも取り上げられていた。リンク、こちら。 まめに見ていないから、ちっとも気づかなかった。いや忘れていたのか。
ミニコミ誌関連で、P115「即売会の世界」石川春菜(八画文化会館)今月もも面白し。そういえば、鏡明さんの「連続的SF話●437」でも今回のタイトルが「富山でZINE」だった。こういうのが流行なのか。ネットとは違った面白さがあるのだろうか
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