ぼくらの鉱石ラジオ 小林健二 筑摩書房 1997年09月15日 初版第1刷発行 254頁 |
こんな面白い本があるなんて、まったく知らなかった。いわゆる鉱石ラジオについての内容なのだが、よくあるゲルマラジオのちゃちなキットなどではない。(もちろん、ゲルマラジオについてのページもあるが)。文字どおり「鉱石」を使って検波器までもを自作するのだ。いうまでもなく、筐体も作る。
何台も並ぶ、戦前の外国製鉱石ラジオの写真がたまらない。谷川俊太郎がはまったビンテージ真空管ラジオのそのまた古い形式なのだ。その昔、薄暗い理科準備室の木製戸棚の中に、ぼうっと並んでいた実験器具のようなたたずまい。稲垣足穂ワールドみたい。
100年近く昔の海外製の紹介だけではない。鉱石ラジオの理論や歴史も紹介している。そして筆者の自作手順も公開されている。カラー写真がきれいなのに加えて、図版も怪しくていい。なにしろ254ページにわたって、鉱石ラジオの魅力にあふれている。
「銀河通信」なる筆者のサイトがあるのだが、その中に鉱石ラジオの通販ページがある。ゲルマニューム以外に検波器で使うための鉱石までもが、数百円で売られている。ワークショップまであった。好きじゃなきゃできない。
筆者の熱意にただただ敬服するばかり。
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