[NO.1487] 本なんて/作家と本をめぐる52話

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本なんて/作家と本をめぐる52話
キノブックス編集部 編
キノブックス
2015年07月25日 初版第1刷発行
249頁

タイトル「本なんて」といいながらも、本にのめり込まずにはいられない気持ち、これは本好きにとってたまらない感情だ。

国立国会図書館のサイトに「部分タイトル」として、目次が出ていた。リンク、こちら
こうしたアンソロジーにとって、筆者名と題名は重要である。それにしても、この撰者はどなたなのだろう。巻末、独立して掲載されている土屋賢二さん?  その幅広さに敬服する。ここに列挙したらきりがないほど。。寺田寅彦、芥川龍之介、窪田空穂、庄司浅水、石川淳、田村隆一といった有名どころから、浅井リョウ、園子温まで。萩尾望都や栃折久美子あたりから年代が推測できそうな気も。

巻末には「執筆者紹介と収録作品出典」が掲載されている。

気になったのが、ページによって紙質をいろいろかえていること。こうしたほうが魅力あると考えたのだろうが、しっくりこなかった。

◆ ◆

P19 浅田次郎「読むこと書くこと」に、面白いところを発見した。浅田さんの幼少時、昭和三十年代には「読書が少年の健全な行為であると考えられてはいなかった」という。
「江戸前の祖父母」の叱言というのがいい。

P22
「本なんぞ読んでたら肺病になっちまうぞ。表で遊んでこい」
「まったく、きょうびの学校は子供に何を教えているんだか。さっさと外で遊んできなさい」

育ちざかりの子供にとって、本を読むなどという行為は今でいう「引きこもり」に近かったのではないか。強要される学問としてではなく、現代のゲームやネットと同様の娯楽だった。

「江戸前の祖父母」という表現、いかにもという感じがする。それでも本を読みたければ、残された道は隠れてするしかない。もっとも、ここで挙げている本は江戸川乱歩の少年ものではあるが。

楽しみの読書はそんなものだろう。