神保町の蟲/新東京古書店グラフィティ 池谷伊佐夫 東京書籍 2004年11月09日 第1刷発行 183頁 |
十年以上も前に出版された本なので、今とは開いている古書店に違いもあろうが、多数収められているイラストがよく、いつまでも眺めていたくなる。
P72~P107「新東京古書店グラフティ」は、まるで妹尾河童さんのイラストみたいだ。「河童が覗いた」シリーズ風に室内の俯瞰図がすべて古書店なのだから、これはもう見入るしかない。P158・159の「喫茶 さぼうる」店内図もいい。
もちろん、文章もいい。紹介されるエピソードが面白いのだ。手にしてみたくなった本が、P121 大塚康生著『車の画帳』。徳間書店刊行(1987年)と平凡社ライブラリーから再編集でモノクロ版になって出された(2002)版の2種類がある。もちろん、文庫版である後者より前者の方がいい。
『大塚康生16歳の車の画帖 終戦直後の日本の路上にて』
『ジープが町にやってきた―終戦時14歳の画帖から (平凡社ライブラリー)』
大塚康生さんは映画『カリオストロの城』などを手がけたアニメーター。ルパン三世に出てくる車はどれも格好良かった。子どもの頃に進駐軍の車を万年筆や色鉛筆でスケッチしたのがこの本のイラストなのだ。
兵士は車の名前を教えてくれたり、スケッチが終わるまで移動しないで待っていてくれたこともあったとか。書き上げた絵をもらった兵士たちは大切に保管していて、それをこの本に収録したのだとも。いい話だ。
P51 神保町で個展をひらいたときの「のし袋の話」も面白かった。「のし袋」に「士(さむらい)がフエを一寸口(ちょっとくち)にしている」というイラストを展示したところ、じっと見つめている婦人がいたという。いわゆる頓智なのだが、答えは教えないでほしいと言い残して帰り、後日個展最終日に再度来られ、答えの記した「のし袋」を置いて帰ったのだそうだ。
こちらは考えても正解を思いつかず、ネット検索をしてやっとわかったのだった。
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P133 宮武外骨『日本擬人名辞書』(大正十年発行)がいい。死語になった偽名、「骨川三内(ほねかわみない)」=骨と皮のみにて身(肉)はないやせた人、などが載っているのだという。古書価は三千円~一万円とか。
サイト「日本の古本屋」で検索すると、たしかに再版が3150円で初版は10800円。2004年から価格が変わっていない。もっとも、現在ではサイト「国立国会図書館デジタルコレクション」で画像により公開されている。リンク、こちら。個人サイトでテキストによるデータベース化しているものまで出てきた。
さて、それでも原書を手にしてみたくなるのは、古書が「もの」としての価値を感じるからなのだろうな。
「神田神保町マップ」がいい。
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