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この号は濃い記事ばかりだった。言い換えると、個人的に好きな内容が多かった。
ページをめくっていくうちに、なるほどと思う。そうか、自分はマイナーポエットが好きだったんだ。高校の図書室で、マイナーポエットについて熱く語っていた友人の横顔を思い出す。
表紙には「尾形亀之助を知っているか?」とまで。おっと表紙には他にも「今月の読者アンケートは「偏愛タイムトラベル小説」だあ」。尾形亀之助もタイムトラベルものも大好きだあ。
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P12
〈特集〉マイナーポエットを狙え!
●座談会 マイナーポエットはヤクルトスワローズである!?
=岡崎武志・荻原魚雷・島田潤一郎
まずはマイナーポエットとは。
岡 反対語は文豪だろうね。長編小説をたくさん書いて、晩年まで活動を続けて円熟していって、何十巻もの全集を残す。もちろん名前はよく知られている。略
魚 短編作家であるという印象もありますよね。
略
岡 鍵は文章に詩的感受性があるというところだよね。
略
岡 僕が念頭に置いているのは梶井基次郎。マイナーポエットと呼ばれるすべての要素を備えている。日本のマイナーポエットキングでしょう。
略
岡 そう。梶井基次郎と中島敦と牧野信一は第三の新人にとっての「三種の神器」と言われたくらい影響は大きかった。
島田潤一郎の夏葉社が、もしも「マイナーポエット文学全集」を出すならという空想企画で盛り上がる。
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P18
素晴らしいマイナーポエットを一人、失ってしまった
●坪内祐三
困ったタイトルだ。坪ちゃんは今月13日に亡くなったばかり。急性心不全、61歳。びっくり。
「坪内祐三の読書日記」は、もう読めなくなるのだ。
ここでは、村上春樹のデビュー直後について。
一九七九年六月、「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞した彼は、一九八〇年三月、受賞後第一作となる「1973年のピンボール」を発表する。
「風の歌を聴け」は中篇、「1973年のピンボール」は短めの長篇で、いずれも短篇小説ではない。
だから最初の短篇小説は『海』一九八〇年四月号に載った「中国行きのスロウ・ボート」だ。
この作品を読んで私は薄々感じていたけれど村上春樹がとても優れたマイナーポエットであると確信した。少なくともあと二十年は楽しめるぞ、と思った。
この『海』一九八〇年四月号はまた編集者塙嘉彦の追悼号でもあった。
中央公論社入社後、フランスの『ル・モンド』紙に留学経験のある塙は国際的な視野を持つ編集者でありながら、一方で、マイナーポエット的なものにも眼のきく人だった。色川武大、小林信彦、筒井康隆といった作家たちに純文学の舞台を提供した。
「中国行きのスロウ・ボート」から十年経った時、村上春樹は国民作家になっていた。つまり、マイナーポエットでなくなった。
今の私は作家村上春樹に何の興味もない。
きっと、最後の一行が先に頭に浮かんだのだろうな。ページの末尾で文章が終わっているし。こういうのって、気になりだすときりがなくなってしまうよね。文章を書くとき。
ああ、そうだったと思い出したのが、「色川武大、小林信彦、筒井康隆といった作家たちに純文学の舞台を提供した。」というくだり。当時、彼らは「流行作家」「読み物作家」だから、文芸誌にはお呼びじゃなかったのだ。
少なくともあと二十年は楽しめるぞ、と思った。こんなことを、しゃあしゃあと書ける坪ちゃんが好きだった。同じことを、いったい何人の作家にたいして考えたことか。すくなくとも、あと〇〇年は楽しめるかな? それは小説だけでなく、書評やエッセイにも、かつてはいたんだよ。本好き、読書好きならぴんとくる。そうじゃないのかな。
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P20
骨折りのとも/木山捷平と天野忠
●田中美穂
木山捷平はともかく、天野忠さんは初めて知った。詩人。
田中美穂さんは随筆集を紹介している。Amazonでみると、随筆集は2冊のみ。その内の一冊を「おすすめしたい」とある。
『天野忠随筆選』山田稔 選(編集工房ノア)
ネット検索で、天野忠関連として見つけたのが次ぎ
天野忠さんの生と詩 河野 仁昭 リンク、こちら。
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P22
尾形亀之助の見つからない詩集
●内堀 弘
Aさんについてというのが、なんとも切ないはなしなので、前文をスキャニングする。
フォークシンガー高田渡の父 高田豊が、尾形亀之助と接点あったことを紹介している。
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P24
ギッシング再読
●能邨陽子
筆者は本の雑誌では有名な恵文社一乗寺店店員さん。
こちらは知らないのだが、山川直人という漫画化の短篇漫画「路上の花」というのが、ギッシング「詩人の旅行かばん」というのに似ているだけでなく、最初の一コマの背景に「ギッシング」という名前の喫茶店が描かれているという。
岩波文庫から2冊が出ている。「ギッシング短編集」(小池滋編訳)、「ヘンリ・ライクロフトの私記」(平井正穂訳)。能邨さんは前者から先に読むように勧めている。
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P28
SF音痴が行くSF古典宇宙の旅
SFとのファーストコンタクト
=高野秀行
『星を継ぐもの』(J・P・ホーガン、池央耿訳、創元SF文庫)について感動したとある。こちらは2度読んで、2度とも普通だった。2度目を読んだ理由は、やはりどこかで面白いと読んだのに、その内容をちっとも覚えていなかったことに驚き、読み直したのだった。ちなみに、今、そのトリックとやらは皆目思い出せそうにない。
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P30
●本の雑誌スッキリ隊が行く!
本の雑誌スッキリ隊、甲州市勝沼に行く!
蔵書整理の話、あまり触れたくない話題なので、パス。
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P34
●読者アンケート
私の偏愛タイムトラベル小説!
『ハリー・オーガスト、15回目の人生』クレア・ノース、雨海弘美訳、角川文庫
よさそう
『タイムライン』マイクル・クライトン、酒井昭伸訳、早川書房中世ものっぽいので現物を見てから判断。マイクル・クライトンだから活劇っぽいかな
『トムは真夜中の庭で』フィリパ・ピアス、高杉一郎訳、岩波少年文庫
いわずと知れた
「クライム・マシン」『クライム・マシン』ジャック・リッチー、好野理恵訳、河出文庫所収
「旅する本」角田光代『この本が。世界に存在することに』メディアファクトリー所収
『流星ワゴン』重松清、講談社文庫
『カムパネルラ』山田正紀、創元SF文庫
『Y』佐藤正午、ハルキ文庫
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P41
連載★新旧いろいろ面白本(88)
火星の上陸から さらに遠方の星々へ
=椎名誠
ミチオ・カク『人類、宇宙に住む』斉藤隆央訳、NHK出版
ミチオ・カク『サイエンス・インポッシブル』NHK出版
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P84
●サバイバルな書物(54)
命とは何かを明言する 新しい物理法則
= 服部文祥
『流れとかたち 万物のデザインを決める新たな物理法則』
エイドリアン・ベジャン、J・ペダー・ゼイン
柴田裕之訳
紀伊國屋書店
濃いのでスキャン
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P118
書籍化までX光年
円城塔
カオスとフラクタル
『ハバナ零年』
カルラ・スアレス
久野量一訳
共和国/BD・宗利淳一
円城塔さんの説明はすごい。賢いんだろうなと思わされる。たとえば数学的カオスとフラクタルの密接な関係について。
P118
個人的に注目なのはまず、どのあたりがカオスで、どのあたりがフラクタルなのかということである。
いわゆる数学的カオスというのは、ちょっと条件が変わったならば、結果がひどく大きく変わるといった話で、バタフライ・エフェクトなどで名高い。近年では、劉慈欣の『三体』にも、この数学的カオスに翻弄される連星上の生物か登場してきて、SFネタとしても現役である。
この数学的カオスとフラクタルには密接な関係がある。フラクタルとは言ってしまえば、どこまで細かく見ていっても、新たな構造がむくむくと沸いて出てくるといった具合のもので、曼荼羅などと方向性は同じである。さてここで、不謹慎ながら曼荼羅へ向けてダーツを投げて、刺さったところを観察してみる。そこから先もどこまでも小さな曼荼羅は続いていって、ダーツのちょっとしたズレが全然異なる世界を開く、といったところだ。
この先、漱石『明暗』から引用がある。
いわゆる偶然の出来事というのは、ポアンカレーの説によると、原因があまりに複雑過ぎてちょっと見当がつかない時に云うのだね。
数学者ポアンカレーが『明暗』に出ていたとは。
まるで、『吾輩は猫である』の中に『放心家組合』のことを山田風太郎が指摘したことを連想させる。
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