[NO.1467] 痕跡本のすすめ

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痕跡本のすすめ
古沢和宏
太田出版
2012年02月17日 第1刷発行
2013年03月14日 第2刷発行
160頁
再読

古本には書き込みやページの間に持ち主の挟み込んだものが残されていることもある。著者はもともと古本には興味がなかったのに、そうした「痕跡本」のとりこから古書店を開くまでにいたったという。カラー写真で見せられると、なるほど感興が沸きます。

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書き込みというのは予想できるけれど、インパクトがあったのは、西脇順三郎の詩集に俳句を1ページごとに推敲しているというもの。それもボールペンで大きめの文字。詩なので下半分ちかくが空白のスペースがあり、そこにおおざっぱな文字とおおざっぱなグリグリで最初の文字を消してある。それも数ページにわたって。著者いわく、西脇順三郎の詩にインスパイアされ、俳句を作っているのではないか。うーむ、シュールです。

サイドラインが引いてあるなんてのは、おとなしいものですね。小学校低学年の漢字テストの裏に走り書きされたダイエットのレシピ。はさんである本は『体脂肪を減らしてきれいにやせる!』。子どもさんのテストの裏にお母さんが書いたのか、と。

全体に戦後の本、それも前世紀末からのものが多い。戦前のえっと驚く痕跡本だって、ありますよね。東京古書会館地下で、この頃、買ってしまおうかと思うのは、そんな本ばかりになってしまった。