[NO.1465] 本の雑誌おじさん三人組が行く!/別冊本の雑誌18

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本の雑誌おじさん三人組が行く!/別冊本の雑誌18
編者 本の雑誌編集部
本の雑誌社
2017年03月25日 初版第1刷発行
331頁
再読

『本の雑誌』の人気連載? を集めた内容。まだ笹塚に編集部があった2010年11月号がスタートでいいのかな?(初出一覧がないので) 分厚くて読みであり。ほとんどの内容は読んでいたので、こうしてまとまってみると、懐かしさいっぱい。

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あとがきを読んで、びっくり。休刊の危機だったのですね。いまだV字回復には遠いようなことを書いておられるけれど、今や芥川賞と並ぶ大きな賞、「本屋大賞」だって『本の雑誌』があればこそ。ところが、本好きの若者たちに聞いてみても、意外とこの雑誌のことを知らなかったりするので、またまたびっくり。どうも、今どきの若者達には知名度が低いのは、ネットで広まっていないことが原因なのだろうか、などと心配してしまいます。WEB本の雑誌 だってあるのになあ。

あとがきでも触れているように、『本の雑誌』の世代交代の問題は、そんなにも大きかったのでしょうか。てっきり、どこかの民間企業のような一族争いみたいなトラブルもなく、すっきりと現編集長さんを中心に、上手な交代がなされているとばかり思っていたのは、脳天気なこちらの思い込みでしかなかったのかな。

とはいえ、今も愛読している『本の雑誌』からは、そんなことは杞憂でしかないと思ってます。勝手ながら。

先日、2度も足を運んだ土浦の つちうら古書倶楽部 が載っていた。それも開店日(2013年3月31日)にレポートしている。さすが、と思いつつ読んでいると、古本ツアー・イン・ジャパン こと 小山力也 さんもおられたという。頭の下がる思い。

いっぱいいろんなところへ出かけているので、どれも面白かった。ツボちゃんが案内する文壇バーなんて、なかなか他の雑誌では読めないもの。

で、おやっと思った記事。「文学フリマに行く」回から

p206
宮 あんなに小説書いている人がいるんですねえ。
杉 でも俺たちが思うような雑誌は少なかった。外に向けて作られてる雑誌。
浜 なかった。まあ、そこがいいところなんだろうけどね。
杉 エンタメも少なかったし。
浜 エンタメは難しいんだよ。読む人のことを考えないといけないから。
杉 基本的にテーマが自分だから(笑)。
宮 詩とか短歌とかも多かったですよね。
杉 書店に棚のないジャンルほどある。純文、詩、短歌、俳句。
浜 潤、ハチノス焼けてるぞ、食いなよ。
宮 美味しいなあ。
杉 お前、シマチョウはちゃんと焼いてから食えよ。
以下略

『本の雑誌』が新鮮だったのは、読者のことを考えて作られていたからだった。いわゆる同人誌との違いは、そこにあった。読んでいる相手のことを想定して書かれていることが、エンタメの条件ということか。

外に向けて作られてる雑誌。/エンタメは難しいんだよ。読む人のことを考えないといけないから。/(文学フリマで扱っているのは)基本的にテーマが自分だから(笑)。

なんだか、このところが引っかかった。伝統的な文芸誌が衰退する中、『本の雑誌』が輝いていた理由は、ここにあった。本屋大賞 もしかり。

もっとも、創設者である4名、椎名誠、目黒孝二、沢野ひとし、木村晋介は、そんなこと言わないだろう。きっと、俺たちは自分が楽しいことだけをガシガシ書いていただけだったよ、なあんてね。