[NO.1458] 古本の雑誌/別冊本の雑誌16

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古本の雑誌/別冊本の雑誌16
本の雑誌編集部
本の雑誌社
2012年10月25日 初版第1刷発行
191頁

別冊本の雑誌シリーズです。月刊誌『本の雑誌』の傑作選では、これまでに掲載された内容からの抜粋なので、古書店についての情報としては役に立たないものもあります。しかし、なんといっても、その情報量の多さとマニアックな点では、ほかに比べるもののないほど抜きん出た存在です。そんじょそこいらの作家が書いた古本のエッセイとは比べ物になりません。古本好きにとって、読んでいてい楽しく笑えるものばかりでした。

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古本を買う魅力は、何気なくふらっと入った古書店で、思いもかけない本が、思いもかけない値段で(しかもきれいな状態で)見つかったときに感じる喜びでしょう。あらかじめ探書手帳のAランクを目的として、何軒も、はしごしているときには、そんな余裕はありません。

恥ずかしながら、薄情すれば、あらかじめネットの「日本の古本屋」サイトで古書を見つけ、あたりをつけておいてから、(しかも、事前に確認の電話を入れたりして)、ゆっくりと休日に店に出向くなどといったこともありました。しかし、それでは面白くはありません。まして、アマゾンで定価1円の古本を買ったとしてもです。

古本屋という店舗がなくなってしまっていることが、なによりの課題でしょう。神保町は地上げで古書店の数が減ってしまいました。地方の個人営業の店は経営者の高齢化で閉じたところが増えました。なによりも一番の原因は文学書の低価格化かもしれません。読書離れという理由は、その次でしょう。

本書、p14「この先十年、町の古本屋は、またどうなって行くのだろうか」坪内祐三、は切実でした。坪内さんが、幼少時からどのように古本屋と付き合ってきたのかを綴っています。

p65「国立市・谷川(やがわ)書店の親父は、その時なぜ首をしめられていたのか」沢野ひとし(絵と証言)、はそのフォントが面白し。内容はいつものたわいない与太話。例の椎名誠「さらば国分寺書店のオババ」を思い出します。そうしたら、ちゃんと、p59に冒頭が掲載されていました。『本の雑誌』No.5 77年夏号掲載とあります。季刊誌とはいえ、もたもたしていると次の季節になってしまいますよ、という時代でした。

p79「活字探偵団 全集の古書価はこの10年間でどう変動しているのか!?」(98年5月号) 1989年→1998年の10年間で、伊藤整やカフカ、三島由紀夫、鏡花、鴎外、荷風などからバルザック、ドスト、明治文学全集までを比較しています。そのほとんどが値下がりしていて、中には同じかやや値上がりもあります。明治文学全集が3万5千円→55万円というのが飛び抜けています。しかし、軒並み値下がりのものばかり。ここに書かれた状態から、さらに20年が経った今は、いったいどうなっているのか。それはまるで暴落としかいいようがないでしょう。

p108「古本 売り方指南」荻原魚雷、面白し。出だしの よく「不動産は買うよりも売るほうがむずかしい」といわれますが、それは古本にも当てはまります。まるで、落語のようです。

次ページの「本を売るということ」北上次郎も哀愁の雨が降ります。そもそも処分というのは悲哀があっていい。まして、売るというのは足元を見られるし。だいたい古本好きなどというのは、買うときには値段にこだわっても、所詮経済にうといもの。

p134「熱愛座談会 高原書店について語ろう!」坪内祐三、広瀬洋一(音羽館)、三浦しをん、目黒考二 これって、初出の表示がないけれど、前に読んだような気がします。

p149 古本者野望対談=よしだまさし VS kashiba@猟奇の鉄人 04年4月号 よしだ氏「古本ディズニーランドというを考えたんですよ。」 というのがすごい。まるで一大テーマパークのようです。憧れはしても、値段が高いのは困ります。

p179「実録・30冊155円の悲劇=よしだまさし」 なかに、実際に売ったときの一覧表があります。
ブックオフ 岩槻店/ブックオフ さいたま円正寺店/古本市場 川口伊刈店/ほんだらけ 蒲生店
このローカルな匂いがいい。

p182「古本本ガイド 書物によって点綴された宇宙」扉野良人 
古今東西面白「古本に関する本」
『石神井書林 日録』内堀弘/晶文社/2001
『石神井書林目録』石神井書林/年三回発行
『「異色の芸術家兄弟 橋本平八と北園克園展」図録』三重県立美術館、世田谷美術館/2010
『古本屋 月の輪書林』高橋徹/晶文社/1998
『月の輪書林 古書目録9 特集・古河三樹松散歩』月の輪書林/1996/目録は不定期刊
『えびな書店店主の記』蛯名則/四月と十月文庫/港の人/2011
『定本 発禁本』城市郎/平凡社ライブラリー/2004
『別冊太陽 発禁本Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』城市郎/米沢嘉博編著/平凡社/1999~2002
『古書往來』高橋輝次/みずのわ出版/2009
『昔日の客』関口良雄/三茶書房/1978、夏葉社/2010
『我が感傷的アンソロジイ』天野忠/書肆山田/1988
『古本泣き笑い日記』山本善行/青弓社/2002、みずのわ出版/近日増補再刊予定
『本の美しさを求めて』関川左木夫/昭和出版/1979
『アイデア No.354 特集・日本オルタナ出版史1923-1945 ほんとうに美しい本』郡淳一郎構成・文/誠文堂新光社/2012
『ボン書店の幻 モダニズム出版社の光と影』内堀弘/白地社/1992、ちくま文庫/2008
『彷書月間編集長』田村治芳/晶文社/2002
『彷書月間』弘隆社→彷徨舎/1985~2010/月刊
『ブンブン堂のグレちゃん』グレゴリ青山/イースト・プレス/2007