[NO.1454] 小林泰彦の謎と秘密の東京散歩

kobayasiyasuhikono.jpg

小林泰彦の謎と秘密の東京散歩
小林泰彦
JTBパブリッシング
2013年04月15日 初版印刷
2013年05月01日 初版発行
155頁

イラストレーターである著者による手書き地図が特徴。都内12、近郊3。それぞれへ実際に出かけた散歩マップと文章。このとおりに歩いてみたい。表紙のタイトルの上に手書きで「どうぞご一緒に」とあるのが笑ってしまう。本書を手に歩きませんか、ということだろう。ただし、このルートを実際に歩くとなると、距離が長くてきつそう。変化の激しいだけに、すでに失われているような気も。

※  ※  ※  ※  ※

イラストレーターの著者は小説家 小林信彦の弟さん。「日本橋」の項に、戦火により焼失したご兄弟生家と周囲の手書き地図がある。これを見たくて本書を手にした次第。兄の信彦が『「あまちゃん」はなぜ面白かったか?/本音を申せば』で紹介していた。

生家周囲の地図「1945年以前の日本橋米澤町界隈記憶図(弦東日本橋2丁目)」がなんといってもいい。他の項にはない魅力だ。1954.2.17 作図完成/1996.9.8 (C)/ヤスヒコ と地図の左下隅にある。本文によれば、著者が高1の時に描いたという。著者の表現でいう「住民各位についての記憶」はほとんどが母親のものだとも。納得。かなり広い範囲にわたって、名前まで記入されているのだから。
また、この地図を描く動機というのも紹介されていて面白かった。それは木村荘八「生家周辺図」だったという。ちなみに場所は200mしか、離れていなかったとも。

nihonbashi_01.jpgnihonbashi_02.jpgyonezawatyou.jpg

出版社サイトから、本書のデータが見つからなかったので、目次を書き出すと

【目次】

まえがき

神田  古くて新しい学生の町を行く
浅草  江戸の謎が残る浅草から遊所吉原へ
佃・月島  はじめから秘密がにおう3つの島
日本橋  日本橋から人形町へ 昔の通学路を歩く
本所・深川  本所・深川を歩けば本当に謎も深い
向島  東京スカイツリーまでの不思議な道
谷中・根津・千駄木  台地と谷間に謎の『谷根千』
霞ヶ関・丸の内  不思議の多い日本の中枢を歩く
赤坂  勝海舟が愛した赤坂は、勝同様に謎が多い
麻布  大使館の町で、そのルーツを発見
代官山・恵比寿  トレンドの代官山・恵比寿の秘密を探る
吉祥寺・三鷹  太宰治と飲み歩くアブナイ道
横浜  秘密が多い山手・関内を歩く
鎌倉  頼朝の悪事を糾弾する散歩路
川越  どこまでも不思議な城下町

参考文献

都内では、半分以上が下町。著者が戦前の日本橋生まれなだけに納得。

上記目次の各地域ごとに、カラー刷り手書き地図がある。詳細な書き込みがあっていいのだけれども小さくて見にくい。これを手に、実際に歩くとなると、拡大鏡が必要かもしれない。地図だけをスキャニングして電子データをスマホで持ち歩く方がいいだろう。もっとも、Kindle版が出ている。

この手の手書きマップは、その昔、流行ったな。