旅する本の雑誌 編者 本の雑誌編集部 本の雑誌社 2018年07月25日 初版第1刷発行 271頁 |
「別冊本の雑誌」というシリーズがあったが、それとは別もの(判型も小さい四六判)。初出、本の雑誌2017年7月号「本好きのための旅行ガイド」+書き下ろし だそうです。
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風景を写したきれいなカラー写真が全部で9葉、ずるいな、と思ってしまう。これまでの「本の雑誌」(別冊でも)では、こんな編集の仕方はなかったような。
出版社サイトに目次あり、リンクこちら。
巻頭にあった次の文に惹かれた
本好きが、本好きに贈る「旅の本」
『旅する本の雑誌』は
詳細プランあり、まったりエッセイありの
いっぷうう変わった旅の読み物です。旅先で本屋を見つけると
つい長居してしまう。京都に行ったら、遠出もせず
三月書房と誠光社を
行ったり来たりして
本を読んで、一日を過ごす。そんなあなたの旅のお伴に
『旅する本の雑誌』をご活用ください。
とりわけ、「京都に行ったら、」のフレーズが気になった。そういえば、しばらく前の「本の雑誌」にあった、おじさんたちで京都へ行き、本屋と喫茶店を巡る企画を思い出したのだ。それに加えて、ぶろぐ「晩鮭亭日常」にも、似たような記述があった。こちらは日帰りで、自転車を用いた古本屋巡り。どちらかというと、後者の方が好きだな。「本の雑誌」には、どうしても新刊書店の比重が多いけれど。
元来旅行というものが好きではない。それに、この先もあえて、ここで読んだからといって出かけてみようとも思えない。それなのに、こうした旅ものというのは魅力がある。
とりあえず、東京ものがよかった。それと、巻末の「本好きの旅ココロエ帖」。後者は5人が同じ項目に沿って書いている。やっぱり5番目に出てくる「小山力也氏」が気になった。
「準備」下準備はあまりせず。営業しているかどうかも調べないでぶっつけ。
「必需品」パラシュート素材のエコバッグがいい。興味わいた。
「マイルール」バス、タクシーは基本的に使わず、歩く。たまにレンタサイクル(読んだことないな)。
「町の歩き方」駅前にある地図の写メを撮って、それを手がかりに歩く。ガラケーでも住所がわかればなんとかなるとも。このあたり、気概を感じた。それと、町なかにある看板屋が描いた地図も、今はないお店の痕跡があったりして読みごたえがあるというところ、そうだそうだと同感した。白地の薄い金属の板に、手書きの地図。枠が木でできた、大判の賞状くらいの大きさ。たいがい、歩道と道路を隔てている金網のフェンスに留められている。あ~。
大御所、小山氏の次の内容に納得した。要約すると。
高円寺でも、沖縄でも自分にとっては旅。いつまでも非日常。旅先で本を買うのはどれも記念品。場所の移動の旅と、古本屋という異空間に入る旅、読書での本の旅が入れ子になっているから、永遠に楽しめる。ただし、本という記念品がどんどん増えていくのがおそろしいとも。
前後するが、東京ものでは、p146~「東京ステーションホテルを満喫する」がよろし。駅をリニューアルした頃、TVでもよく取り上げていた。もっとも、リニューアル前の古びた時分の録画もどこなに残っていたかもしれない。ホームを見下ろす窓とその鍵が良かったような。
ホテルにビュッフェがあったのだった。それとルームサービス。いいぞ、いいぞ。そういえば、小林信彦の『うらなり』にも、戦前のこのホテルが出てきたな。
パート2では、お茶の水の山の上ホテルに泊まる。これは今さら面白くない企画。申し訳ないが、新刊書店ばかりなのは、どうも。
p172~ タウン誌「新宿プレイマップ」の編集長だった本間健彦氏による文章「60年代新宿〈密室の祭り〉の場」に出てくる東口のイラストマップ「SHINJYUKU☆2MAP」がいい。こうした手書きの地図がついたタウン誌の元祖。
小さな旅にまつわる話がいい。
p39~ 坪内祐三氏「川崎長太郎、内田叶夢、小田原シングルライフ」では、あえて一泊。かつてのロマンスカーの音「ピ・ポ・パ・ポ・パーン」がよろし。しつこく、お城の近辺をうろうろするのも。
p118 久住昌之『野武士、西へ 二年間の散歩』(集英社文庫)よろし。あの久住さん。
p130~ 佐野由佳「懐かしい年寄りに会いに行く」は別格。何しろ山本夏彦氏による雑誌『室内』勤務だったのだから。
生まれたときからおじいさんだったのが山本夏彦。内田百閒は生涯ずっとおじいさんの皮をかぶった子どもだった。という。
p212~ 高頭佐和子「遠征読書旅はいいぞ!」
発想が面白い。通勤電車が集中して読めるなら、いっそのこと本を読むために電車に乗りに行けばよい。したがって、車中が数時間という目的地? は、宇都宮、三島、高崎、熱海、水戸。遠く小渕沢。ポイントは特急や新幹線は使わないということ。読書が目的なので。
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