文豪図鑑 完全版/あの文豪の素顔がすべてわかる 株式会社開発社 編者 自由国民社 2017年03月03日 初版第1刷発行 111頁 |
表紙がアニメキャラの少年たち。まるで深夜TVで見た、アニメ『文豪スレイドックス』がらみで出版されたような。明治・大正・昭和の文豪50人を取り上げ、コンパクトにまとめてある。選定はきわめてオーソドックス、文学史の参考書で必ず出てくる作家ばかり。全員が国内、女流作家はいない。出版社サイトに登場する50人が掲載されていた。リンクこちら
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レイアウトは、一人の作家で見開き1ページ。右側のページには一面に作家の全身イラスト。脇に4箇所の枠を設け、それぞれ5行程度の短文で紹介がある。2つは編集者が書いたらしい紹介記事。これがどれも今風で面白い。残り2つは生没年月日、出身地、趣味・特技、プロフィールが表になっている。
左側のページは3段構成。1段目「 〜はこんな人」として2つの内容で紹介文。2段目「読んだ気になる代表作ガイド」として、作品の紹介文と本の表紙写真。3段目は「 〜とゆかりのある人々」として、作家の相関図。これもよく読むと、興味深かった。姻戚関係、影響を受けた海外作家、交友関係、門弟などの名前が、まるで歴史の受験参考書のように矢印等の線で関係を示してある。もちろん、名前だけでなく、上半身のイラストが大半には付いている。
この構成はどこかで見たような気がしていた。巻末「参考文献」のトップを見て納得した。『最新国語便覧』浜島書店/『常用国語便覧』加藤道理編 浜島書店 とある。ともに中学校の副読本で配られている「便覧」だった。なるほど。「参考文献」の末には「その他、青空文庫やwebサイトを参考にしております。」とも。リストで目を引いたのが、今は亡き黒岩比佐子の『編集者 国木田独歩の時代』角川選書だった。ネット検索で引っかかったのだろうか。
『文豪スレイドックス』関連というよりは、今風の文学史に向けた学習参考書なのかもしれない。
短いコラムのような短文の中には、キャッチーなフレーズも散見する。なによりも、右側全面に繰り広げられている作家の全身像はどう考えても違うだろうというものもある。(近代作家のイメージというのは、文学史で紹介される写真の枚数が限られているためだろう、と言われている。特に白黒写真は。なぜなら、カラー版でのポートレートが現存する作家には、そんな限られたイメージというのは薄いのだ。)
しかし、作家の生没年月日や出身地、相関図のレイアウトを見ていると、思いの外、几帳面な編集を感じてしまった。
50人を通して読んでいると、ばらつきを覚える。もちろん、漱石や鴎外といった参考図書にあふれている作家はともかく、広津柳浪あたりでは紹介のネタにも事欠くだろう。
漢文調の硬い小説家というイメージの強い中島敦が、スチーブンソンをモデルにした『光と風と夢』などの作品を書いていたこと。本人はダンスホールや麻雀荘に出入りしていたことにも言及していたことを取り上げていた。意外だった。勤務先である横浜高女の「教え子の1人と禁断の関係に落ちたことも」というのは、これまでどこにも目にしたことがなかった。出典は?
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