[NO.1431] THE BOOKS/365人の本屋さんがどうしても届けたい「この一冊」

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THE BOOKS/365人の本屋さんがどうしても届けたい「この一冊」
ミシマ社 編
ミシマ社
2012年08月11日 初版第1刷発行
422頁

水準が高く、選書にはお得な一冊。書店と直接取引している小さな出版社が企画。日本全国の書店員365人さんに推薦書を依頼したもの。面白い発想。手書きポップが目をひく。どの選書も多岐にわたっている。さすが現場の推薦、読みたくなる本が多い。判型がペーパーバックスみたい。表紙、クリーム色に文字のセンスが格好いい。

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直接取引しているので、なじみのある書店に「これだけは、どうしても届けたい」と思っている本を尋ねたのだという。「本屋大賞」の個別版だ。レイアウトはページ見開き片側で一店舗(1人)1冊の紹介。横書き、書影あり。紹介の本文字数もほどよい。面白いのは、さすが書店員さんによるいち押し。いかにも店頭で目にする「ポップ」、手書きによる短い推薦コピーが添えられている。この手書きが良いのだ。個性が表れるとは、よく言ったもので、実に新鮮。真似してみたくなる。

推薦文はどれもひかれてしまい、これ! と軽く引用できないものばかり。強いて挙げれば、p065 MARUZEN&ジュンク堂書店札幌店 菊池貴子さん(選)『小さな町』(小山清 著、堀江敏幸 解説、みすず書房、2006年、272ページ、定価2600円(税別)、ISBN略、装丁:尾方邦夫)......引用していて、この詳細なところも好きになってしまう。もちろん、ページ下には書店も住所と連絡先も。さらに、編集部から書店紹介のコメント欄あり。充実している。で、こちらの推薦の文章に魅せられました。

個人的には、新刊の平台からガシガシ売れる本よりも、普段は本棚に背表紙を見せていて、時折、思い出したように売れていく本のほうが好きだ。本書は、著者が新聞配達をしながら暮らした町での日常がひっそりと、丹念に描かれている私小説。以下略

「ガシガシ」って、椎名誠節ですね。推しているのが小山清。文中で触れているのが西村賢太。

こういうのが、365編も続いているのに、どれも中身の水準がちっとも落ちていない。じっくり辞書を読んだ気分になった。充実した時間を過ごせた気分。

なにしろ、「この本は、お宅の書店からの注文が全国で一番」などと、版元から言われた書店員さんたちが綴る本の紹介なのだから、つまらないわけがない。

巻末にはもちろん、索引が2種類。「タイトル」というのはよくあるけれど、「著者・編者・翻訳者など」でも別項目というのは、なかなかない。学術書じゃないのだし。さらに、細かな日本地図に書店の紹介。親切を通り越している。こういうことが、やりたかったのですね。

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【個別に気になった本】

p113『主語を抹殺した男――評伝 三上章』(金谷武洋 著、講談社、2006)
三上章の評伝が出ていたとは知りませんでした。ぜひ、読みたい。いわた書店岩田徹さんによる紹介文も面白し。

p277『17歳のための世界と日本の見方――セイゴオ先生の人間文化講義』(松岡正剛 著、春秋社、2006)
2006年が続きますね。17歳のための、とはあっても、きっと読みでがあることでしょう。

切りがない。嬉しい悲鳴というやつ。