[NO.1428] 知の仕事術/インターナショナル新書001

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知の仕事術/インターナショナル新書001
池澤夏樹
集英社インターナショナル
2017年01月17日 第1刷発行
2017年02月06日 第2刷発行
221頁

作家 池澤夏樹による書き下ろし。これまであえて公開してこなかったプライベートな手法をまとめたもの。日常の書斎(机、書棚は手作り)、愛用文具。情報の収集は新聞重視、本の購入法(新刊、古書、処分法)、読み方、書評。アウトプットについて(アナログメモと整理法、デジタル機器、分野別への対応法)。

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【なぜ、今、公開したのか】
その理由が目をひいた。最初にページをめくると唐突に出てきた 前書き、「はじめに あるいは反知性の時代の知性」に、本書タイトルとの違和感を抱えつつ読む。池澤夏樹の熱気がこもっている。読後、共感。

ものを知っている人間が、ものを知っているというだけでバカにされる。

リアルなSNSでのやりとり。どうして炎上しなくてはならないのか。まるで焚書坑儒のようだという。ブラッドベリ『華氏451度』、ナチスと文化大革命での例。

著者による動画が出版社サイトにアップされている。

【追記】2022年9月18日
集英社インターナショナルの公式サイトにリンクのあった動画(https://youtu.be/IWCls9ZdWy0))が非公開となっていました。どんな経緯があったのやら。

「まえがき」は読めました。公式サイトの「立ち読みする」から入れます。リンク、こちら

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【なかみについて個別にたどると】

冒頭の危機的な記述とは違い、それぞれのタイトルに沿って書かれている。

目次はアマゾンサイトにあり。

p96 机(ホームセンターで集成材を購入。サイズまで公開)と p116 本棚は手作り。腰痛もちにとって関心が高い椅子について、ほとんど省略されていたのが残念。キャスター付きで布張りの木製、気になる。読書はもっぱら書斎で机に向かっておこなうという。日常の様子を公開している様子、まるで違うが渡部昇一を想起。

【インプットについて】
早い時期からデジタルに向き合っていた池澤氏だが(その昔、机上に『天文年鑑』を置いていた)、紙を重視している。「第1章新聞の活用」。全体を広く見られることがよいという。ネットでは深く探せても、狭くなってしまうとも。ピンポイントでないと本を買えないともいう。本を探すときには、実際に書店に出向くことで出会う本がある。大型書店は売り場面積が大きすぎ、ネット書店に似てしまう。出会いが楽しみなので、銀座「教文館」「LIXILブックギャラリー」愛用。立花隆は東京・神保町の東京堂書店だった。

もちろん、新聞は探書だけではない。社会的な手がかりを得るためである。切り抜きはしても、スクラップブックはしない。このあたりはTVと比較して、文字重視の主張。新聞をネットと比較する中で、「グーグルマップ」と「地理院地図」の比較が面白い。国土地理院のサイトに入るとなるほど。紹介されるまで、気がつかなかったこと、多し。明大通りの内外地図で買っていたころとは、かくも進化の度合いが異なることに愕然とする。

【書評について】
毎日新聞掲載の書評は丸谷才一から依頼されたとのこと。しばらく池澤夏樹の書評関連書から遠ざかっていたので、忘れていた。本書でも紹介されている『読書癖1』(みすず書房)~『読書癖4』(みすず書房)を発掘したくなる。みすずらしい白のすっきりしたカバーが好きだった。池澤夏樹を好きなのは、理系の匂いがしたからだった。

p39「毎日新聞書評」をまとめたもの
『愉快な本と立派な本 毎日新聞「今週の本棚」20年名作選(1992~1997)』
『怖い本と楽しい本 毎日新聞「今週の本棚」20年名作選(1998~2004)』
『分厚い本と熱い本 毎日新聞「今週の本棚」20年名作選(2005~2011)』
自分のデータベースで検索すると、①②が未読。楽しみが増えた。

p42 松岡正剛の書評サイト「千夜千冊」
やっぱり出てきた。文学者が書いた書評集紹介の本で、実際に目にしたのは初めてかもしれない。

p43 『読書術』(加藤周一 著、岩波現代文庫、2000)初刊1962年
これも、調べると未読也。入力漏れかも。

p47「毎日書評賞」受賞作/「毎日出版文化賞書評賞 2013年度~2016年度
具体的に書名、著者、出版社が一覧で紹介されている。これもネットで検索できた。便利なものだ。

p69「古書店の楽しさ
p71「古書業界を変えた「日本の古本屋」というサイト
p75「図書館の使い方
入手法というよりも、本の手放し方という視点の転倒が興味深い。手に入れられれば、持っている必要がなくなる。わかってはいるのだ。それでも手放せないのは、どうしたらいいのか。

p131「ストックの読書、フローの読書(あるいは、さらば必読書)
書物を選ぶ評語が「ためになる」から「おもしろい」に変わったのだ。この評語を低級として退けることはできない。曇らない目で見れば、『正法眼蔵』も『ユリシーズ』も『ゲーデル、エッシャー、バッハ』もとてもおもしろい本なのである。
『読書癖3』(池澤夏樹 著、みすず書房)

やっぱり、1巻~発掘せねば。ここ数年、見ていない。きっと段ボールの奥底なのだろう。

p116「第6章 本の手放し方」
あまり参考にはならなかった。「厳選は蔵書を最小限に抑える方法と考えてもらおうか。」といわれても、それができないのだ。

御尊父 福永武彦と限定本について激しいやりとりをしたという逸話が面白いが、新潮社版 福永武彦全集を所持しているマニアにとって、あらたに限定本が出るという知らせを読まされては、とても本の処分について、説得されそうにない。

ただし、次の件は身に染みた。

p123
ぼくが自分の本を比較的早く手放していくのは、自分が死んだ後のことを考えるからでもある。
蔵書が残ると、遺族が困る。

他でも散々目にしたフレーズ。お茶の水の古書会館地下の棚の前で、ときどき感じ入ったことがあった。週末に開かれた古書展。その棚の中で、おそらく個人蔵書と思われる古書がズラッと並んでいる一画に出会うことがある。戦後、まだ紙質がよくないものから昭和後期の小説まで。戦後の思想書、あるいは実存主義から1970年前後の雑誌「太陽」など。古い地味な背表紙に混じって、ちょっとカラフルな背の昭和50年頃に出た小説がちらほら。雑誌も文庫も単行本も。亡くなった遺族が出したものだろう。

では、手許に残す本はどうやって選ぶのか。

写真入りで紹介されている

p151 フランスの『LES GUIDES BLEUS』シリーズのギリシャの巻

これからギリシャへ出かける挨拶に出向いた池澤夏樹に、あの林達夫が手渡したのは、上記の1920版だった。「いずれ行きたいとギリシャ旅行を夢見てずっと手元に置いていた」それは、「いまでもぼくの本棚に置いてある」という。そうだろう。つまり、思い出の本は残す。

p179「第11章 語学習得法」で、「「暇」が絶対に大事」という、池澤氏。今から習得はできないとも。

そんな著者が「よく見る海外サイト」は

p194
ぼくの場合、ウィキを引くと次に、英語のサイトに飛ぶことが多い。サイトの左側に「他言語版」というコーナーがある。項目によるが、英語版のサイトは日本語版とは比べものにならないほど充実していることが少なくない。
途中略
何かあったとき、海外の新聞のサイトを覗くことはある。比較的信用しているのはイギリスの『ガーディアン』。

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アウトプットについては書けなかった。本への書き込みは、あとから消せるように6Bの鉛筆。それを消しゴム付きのキャップでポケットに入れているとか、消えるボールペンのフリクションを愛用とか、最初の概要を考えるにはA4版の紙に書いてみるとか。デジカメはキャノンを愛用などなど。モノ以外でも発想法や具体的な執筆についても公開している。

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『ブッキッシュな世界像/白水uブックス』(池澤夏樹著、白水社、1999)ではないが、うっすらとブッキッシュに偏らないように意図することが肝要であるというニュアンスがあった。これは自壊をこめておかねば。