[NO.1422] 三人よれば楽しい読書

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三人よれば楽しい読書
井上ひさし松山巌井田真木子
西田書店
2018年04月09日 初版第1刷発行

今は亡き、井上ひさし氏の鼎談書評が今頃出ていた。初出は文藝春秋から、かつで出ていたPR雑誌『本の話』「鼎談書評」(計24回)でした。1995年7月号~1997年6月号、なるほどです。その頃は忙しくて、PR雑誌にも目を通していなかったので、鼎談について知りませんでした。

それぞれの職業や立場はもとより、3人の年代がうまく離れていることが面白し。井上ひさし(1934年)、松山巌(1945年)、井田真木子(1956年)。13万冊の蔵書を山形の遅筆堂文庫へ送ったという井上ひさしの発言が全体をリードすることもなく、場合によっては反対意見によって話題が移ってゆく場面もある。

第一回「いい書評わるい書評」は思ったほどの面白さは感じられず。むしろ、第二回から3冊ずつ取り上げられた本について興味があった。(3名が回ごとにローテーションで提案したのだという。条件は3冊の中、1冊は文藝春秋の刊行であることとも。)

未読の中で、もっとも読んでみたくなったのが、岸部四郎『岸部のアルバム「物」と四郎の半生紀』。
夏目漱石にひかれて初版本を集める。部屋を借りて古道具を置き、自分の漱石山房まで作る。次に「漱石を重んじない不埒な輩がどんなことをいっているのか、たいへん気にな」って、アンチ漱石の荷風を集める......。素晴らしい。

井田氏曰く「実存的買い物主義者」。

井上氏が発見したこととして、

p160
日本人の生活にとって、高度成長というものが大きな境目になっているということ。あの時期を境に、それ以前のものが壊され、捨てられた。岸部さんは、高度成長以前のものに、一生懸命執着しているんですね。

おやっと思ったこと。

p92
井上 大井廣介『ちゃんばら藝術史』深夜叢書社。一九五九年に出版されたあものを、今度、俳優の佐藤慶さんが、大井さんが残した遺稿を補って復刻なさった

佐藤慶、やりますねえ。

p94
井田 かと思うと、白井喬二の『富士に立つ影』をドストエフスキーを出して論じたり

『富士に立つ影』とドストエフスキーを比較するって、いろいろなところで目にしてきたけれど、ここが原点だったりして......。(笑)。

p94
井田 (白井喬二は)埴谷雄高や平野謙、荒正人なんかと遊ぶけれど、

なーるほど。そういう交友関係だったっけ? 井上ひさし氏の発言ではなく、井田氏のもの、というのも面白し。

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文体について
中野翠『会いたかった人』について。井上ひさし氏曰く、「このところ全盛の新言文一致体の一つの頂点ですね。しっかり書きつつ、話しことばでちょっと外す。それがうまい批判にもなっている。」

清水ちなみ『禿頭考』について。松山氏曰く、「文章も、新口語体というのか」。

新言文一致体 新口語体 それぞれ、若干呼び方は異なってはいても、面白い。中野翠、清水ちなみ、それぞれの文体に対してのとらえ方を意識しているところ。

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既読では、それをどのように論じているのか参考に。
立花隆『ぼくはこんな本を読んできた』、関川夏央『二葉亭四迷の明治四十一年』、妹尾河童『少年H』。