[NO.1398] 追悼の達人

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追悼の達人
嵐山光三郎
新潮社
1999年12月15日 発行

てっきり再読かと思いきや未読だった。10年近く前の嵐山光三郎氏のお仕事。444ページもあり、分厚くて、たっぷり読み応えあったけれど、あれまあれまという間に読了。読みやすし。49人の追悼文について掲載している。それを五年間かけてまとめたのだという。

p434
この五年間というもの、私は作家への追悼文ばかり読んで過ごしてきた。八畳の仕事部屋は、右も左も追悼文だらけである。近代文学館はじめ神田西秋書店ほかで収集した古雑誌とコピーの山である。そのなかで寝るから喘息が悪化し、ヒューヒューと音をさせながらこの「あとがき」を書いている。古雑誌にはダニがいて、そいつが腹や背中をかむ。追悼文の山は言葉の卒塔婆のようで、追悼の墓場にゴロ寝してきたようなものだ。ようやく書き終えたから、崩れ落ちそうな古雑誌は虫干しして、部屋にはダニ退治薬をまき、コピーは焼いて葬送するつもりだ。

なんともはや。読み飛ばしては申し訳なかった。

おもしろかったのが没年順という配列だった。ユニークですよ。「生まれた順ではないから、長寿の作家はあとになる」「明治、大正、昭和の作家を没年順にすると、また違った文学史が見えてくる」。早世の作家、長命の作家。仕事部屋のダニ云々はネタっぽいが、最後のコピーを焼いて葬送というところが週刊誌記事ふうで、著者らしい。

かつて、笑っていいともというテレビ番組があった。その日曜版「笑っていいとも!増刊号」に編集長と呼ばれて出演していたのは40歳代前半だったから、容貌も若かった。昭和軽薄体グループと称された祐乗坊英昭さんも、今や76歳だろうか。そりゃあ追悼文と親密にもなるだろう。

巻末に主要参考文献がある。いわゆる研究書は少ない。