[NO.1397] 書き出し「世界文学全集」

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書き出し「世界文学全集」
柴田元幸 編・訳
河出書房新社
2013年8月20日 初版印刷
2013年8月30日 初版発行

しばらく前に読んだ斎藤美奈子著『名作うしろ読み』を思い出す。こちらは世界文学。

すべて柴田元幸氏が訳しているというところが特徴でしょう。もちろん英語版からの和訳なので、元版を何に求めるかというところに興味がわく。漱石の猫は Aiko Ito & Graem Wilson による英訳(1905~7)から重訳 とある。可笑しかったのが、「原文を極力忘れるように努めて訳した。」とのこと。

「重訳で読む世界文学篇」には『オデュッセイアー』ホメーロス、『変身』カフカ、『源氏物語』紫式部、『神曲』ダンテ、『ドン・キホーテ』ミゲル・デ・セルバンテス、『伝道の書―あるいは説教者』旧約聖書から、『ファウスト』(第一部)ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ、『ボヴァリー夫人』ギュスターヴ・フロベール、『アンナ・カレーニナ』レフ・トルストイ、『カラマーゾフの兄弟』フョードル・ドストエフスキー、『私は猫だ』夏目漱石、『変身』カフカ、が挙げられている。で、訳すに当たり選定した本の出版年が現代のものから、かなり古いものまでの開きがあった。ここのところの説明がなかったので、気になる。

P240
「後口上」
英語圏でもここ二十年くらい、古典新訳の流れがあるので、そうした新訳からの重訳もいくつか入れてみた。これら新訳が話題にされるにあたっては、当然訳者名というものある程度注目されるわけだが、全体としては、日本に較べて、訳者という存在にそれほど光は当てられない。今回参照したペンギン・ポピュラークラシックス版の『ボヴァリー婦人』英訳など、いくら探しても訳者の名前が見当たらない!

で、その『ボヴァリー婦人』には「英訳者不詳 から重訳」としか説明がなく、ペンギン・ポピュラークラシックス版のことにも触れてはいなかった。もっとも、そんなことなど気にせず、名作の冒頭を楽しめばよろしいのだろうな。