[NO.1374] 巴里滞在記

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巴里滞在記
小宮豊隆
岩波書店
1938年2月16日 第1刷発行
1987年2月24日 第2刷発行

不思議な本だった。装丁も何もかも古いまま。初版第一刷が1934年で初版第2刷が1987年の本書。どこにもあらためてまた出版された理由の説明がない。巻頭には「序」のみ。巻末にも特に説明等ない。
出だしがすごい。

一九二三・一○・一七・
ゆうべ七時十五分にアムステルダムを立つて、今朝六時五十分に巴里についた。

活字が活版印刷のまま。古いままスキャニングをかけたのだろうか。岩波は戦災で焼けていないのか。文字が紙に凹んではいない。

全体は3部構成。
巴里滞在記
『第三研究』の芝居
ストックホルム

著者小宮氏といえば漱石の蔵書や手帳を東北大に引き取ったこととその経緯を漱石の奥様があまりいい言い方をしていなかったことくらいしか記憶にない。「序」によれば演劇関連で洋行した。「スタニスラフスキ」の記述あり。
『第三研究』の芝居とは「スタニスラフスキ」関連とのこと。「ストックホルム」といえば「ストリンドベリ」のことが中心。全編演劇。

チェーホフやハウプトマンの名前。なにより、出だしからカラマゾフの兄弟について。なるほど、モスコウ芸術座だ。前半は興奮冷めやらぬ熱い思いで書かれた現地で得た演劇関連の記述ばかりで読みにくし。後半になり、やや日本人とのからみが出てきて読める部分もあり。

どのような経緯で第2刷が出版されたのか検索していて、国立国会図書館デジタルコレクションにて前ページのスキャニングされたものを見つけた。リンクこちら。http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1235730

上記の古書を見ていておやっと思ったのが、奥付。「版権所有」の印が押してない。枠あるが、空欄のまま。国会図書館に納本する際、印税が発生しないので押さなかったのだろうか。今もそうなのか? 今は押印は省略なのだろうが。