[NO.1367] 不良になりました/東京日記4

huryouni.jpg

不良になりました/東京日記4
川上弘美
平凡社
2014年2月12日 初版第1刷発行

川上弘美さんの「東京日記」シリーズの4冊目です。2010年~2013年は、筆者にとって、東日本大震災、引っ越し、入院、手術といろいろ重なった年月だったとのこと。ウェブ平凡 web heibon に連載した内容です。改行が多くて、まったり。私生活は極力排除しているかと思いきや、息子さんのことが3回も出てきました。このとき彼は大学生です。同居人というのは再婚した相手のことでいいのかな。

p52
「『人間を知れば知るほど犬をすばらしいと思う』って、エリック・サティが言ってるよ」
と、突然こどもに言われる。

p89
友だちからの電話。
息子の話をしてくれる。
彼の通っている大学には、「微生物の巣穴の研究の、日本一の権威」の先輩がいるとのこと。

p97
こどもに、ピアスの穴を自慢する。
こどもは、じいっと穴を見つめたあと、小さな声で
「かあさん、不良になったんだ」
と、つぶやいた。

日記の体裁はとっていても空白が多いので、その途中を想像するしかありません。それが眼目だったりするかもしれない。

多いなと思ったのが、街中で耳にした他人の会話の内容をネタにした文章でした。意識して耳を澄ましているのだろうか、と気になりました。それとも自然と聞こえてくるの?

こういうのが今どきのエッセイなのかな。

文体は練られているのか、そうでないのか。著者特有の味なのか。わかりません。

少なくとも、炎上などするはずないだろうな。かならず編集サイドの目が行き届いていそう。