[NO.1356] 読書人と日本人

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読書人と日本人/岩波新書
津野海太郎
岩波書店
2016年10月20日 第1刷発行

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津野海太郎氏がこんな本を出していたことに気がつかなかった。岩波新書で。

いわゆる出版不況がいつから始まったのか。よく言われているのが、収益のピークは1997年だったとか。で、以降は下降線をだどるばかり。

その原因として、数多く言及されてきた。活字ばなれから出版界の構造的な課題まで。

しかし、本書で津野海太郎氏がいうには、20世紀がたまたま珍しいくらいに、人々が本を読む時代だっただけであるという。20世紀は「読書の黄金時代」だったのだそうだ。だから、今、本が売れないのは、元の状態に戻っただけであろうと。なんともはや。丁寧に本がどのように読者の手に渡ってきたのかを時代をさかのぼって調べている。本って、どのくらい出版されてきたの? 読者層はどうだったの? で、現代は?
岩波新書らしいといえばらしいかも。巻末には引用文献一覧。

後半、電子の本や図書館の問題まで触れているが、こりゃあ、再度、かたい本が売れる時代はもう来ないのだろうと考えてしまった。だからといって、自分自身が詠まなくなるかといえば、けっしてそんなことはないと思うが。

著者が調べた内容よりも、著者がリアルタイムで経験したところの方が面白い。まして、自分自身が経験した時代についてだと、なおさらよくわかる。