ドーダの人、小林秀雄/わからなさの理由を求めて 鹿島茂 朝日新聞出版 2016年7月30日 第1刷発行 |
久々、目から鱗の本。小林秀雄の「わからなさ」を少しわかった気にさせてもらえた。ところどころ、ロック音楽をつかっての比喩など、はしゃぎっぷりもあったのはご愛敬かな。今どきの大学生へ向けての講義を彷彿とさせる。小林秀雄訳のランボーの魅力が読んでもピンとこなかった理由にも納得しました。文章のおかしなところは、さすがにこちらが年齢を重ねた分だけ気づいたけれども、こうして丁寧に説明をされると改めて胸にすとんと落ちる。
1980年代に入って、小林秀雄の凋落が起きたという説明もよかった。おやっと思ったのが、河上徹太郎の存在。常識人である川上と比較すると、(鹿島茂氏による説明によれば)ドーダの視点から読み解いた小林秀雄の「変」が光り輝く。
小林秀雄という人物評だけでなく、なぜ仏文が我が国の文学青年どもに大きな影響を与えてきたのかを解説しているところも面白かった。読本堂NO.1342 辰野隆 日仏の円形広場にもそれについての解説があったが、こちらもまた別格の説得力があった。
やるなあ、鹿島茂氏。
初出は「一冊の本」2011年6月号~2015年12月号の連載「ドーダの文学史」を改題し、加筆修正したとのこと。
コメント