日本語を作った男/上田万年とその時代 山口謠司 集英社インターナショナル 2016年2月29日 第1刷発行 |
549ページに渡る大部。読みであると思いきや、一気に読めた。文体が読みやすし。
途中、上田万年が消え、鷗外が全面に出てきた。
p4「はじめに」で、主人公の万年があまり出てこない云々......とあったので、おやっ? ここのこと? と思ったくらい。
それにしても鷗外って嫌な奴だねえ。恥ずかしい。冒頭と最後に出てきた臨時仮名遣調査委員会の描写が印象的だったが、文相岡田良平が旧仮名遣いに固執した理由がはっきりしない。p488に「江戸のかたきを長崎で取った形」とあるが、どうもそれだけでは理解しきれない。そのくせ、p492では保科孝一の言葉を引いて、仲は悪くなかったようにいうが......なんだかなあ。
物集高量なんて珍しい名前が出て来た。いやはや。
ミニ知識で面白かったのが
p32
江戸時代、参勤交代で地方からやって来た大名などは、江戸城内でどのような話し方で会話をしていたのであろうか。全国各地の方言が飛び交い、話が通じるのは到底無理だと想像できる。それを解決したのが「謡曲(能楽)」という共通の教養であった。
江戸時代には、謡を謡うための発音の仕方を説明した本も出版されている。また謡の内容は中国古典と日本文学をもとにしたもので、語彙も漢語から和歌に使われる洗練された大和詞で占められ、「候文」で記されている。
元和卯月本と呼ばれる江戸元和六(一六二○)年に出版された百番の謡本は、大名家では必ず持っているものであった。これが彼らの共通言語であったのである。
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