[NO.1306] ROADSIDE BOOKS 書評2006-2014

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ROADSIDE BOOKS 書評2006-2014
都築響一
本の雑誌社
2014年6月30日 初版第1刷発行

『本の雑誌2014年7月号』に広告が載っていた。版元だった。

......本作りにいちばん必要なのは
潤沢な予算でもなければ
優れた印刷所でも
強力な取次でも
書店ですらない
「これだけはどうしても読ませたい!」
というモチベーション
意思のチカラ
それだけだ

読書と人生のリアリティが詰まった書評集。
自身の前著作について語る
「自著解題 1989-2013」も収録!

WEB本の雑誌 にも紹介がUPされている。
都築氏の週刊メールマガジン「ROADSIDERS' weekly」がいい。

p298
本棚が、いらなくなる日

本が好きな人間で、書斎を欲しいと思ったことがないひとはいないだろう。
重厚な机と柔らかな照明、高い天井の部屋の、床からずーっと上まで書棚が作り込まれていて、上のほうの棚に届くハシゴが据え付けられていて......。僕も、そういう部屋に憧れた時期があった。ずいぶん長いこと。
編集者という仕事を始めて、もう三十年。いままで仕事で日本各地、それに世界のいろんな場所の、本好きにたくさん出会い、すばらしい蔵書をたくさん見てきた。溜息しか出ないような美しい部屋の、溜息しか出ないような美しいコレクション。そういうのをずっと見てきて、やっと気がついたこと、それは「コレクションって、けっきょくはカネの勝負だ」という単純な事実だった。
なにも本に限ったことじゃない。絵画だろうが、骨董だろうが同じこと。「カネじゃなくて、選択眼の問題でしょ」と物識りは言うだろうが、現実にコレクションの質というのは、たぶん九十五%ぐらいまではカネで決まってしまう。ほんとに難しい、センスが間われるレベルというのは、最後の五%ぐらいの領域だ。 そう思うようになってから、「蔵書に埋もれて一生を送りたい」という気持ちがすっかり失せてしまった。けっきょく、貧乏入は金持ちにかなわないのだし、金持ちは大金持ちにかなわないのだし。

なるほどと思った。同じく「「蔵書に埋もれて一生を送りたい」という気持ちがすっかり失せてしま」っては、まだいないけれども。皮肉なことに、上記『本の雑誌2014年7月号』の巻頭が「特集 絶景書斎の巡る旅!」と題している。

今月はいつもと趣をかえて、目で見て愉しむ写真満載の書斎特集。一万冊を収める円筒形書庫から、ほんと仲良く暮らす分散収納の家まで、本誌初!の巻頭カラー十六ページでどどんとスタートするぞ!

で、都築氏の文章に戻る。これまでことあるごとに、どうして人は(自分は)油断すると収集癖を発揮してしまうのだろう? と考えてきた。この際、コレクションなんて趣味はない! とおっしゃるかたは入れないでおきます。特に本。それも古本。

都築氏の「本棚が、いらなくなる日」の冒頭を読むと、たしかに目から鱗が落ちるよう。カネの力と言われてしまえば、身もふたもない。その昔、オーディオが流行していた頃、それだけの金額を再生装置にかけるのなら、その分をレコード購入に充てた方がどれだけいいか? などと思ったものだ。