ポルトガルの世界/海洋帝国のゆくえ 市之瀬敦 社会評論社 2000年12月15日 初版第1刷発行 |
このごろポルトガルに興味がわいてきたので手にしてみた。ちょっとした概説がほしかったのだが、それとは異なった趣旨で書かれていた。副題にあるように「海洋帝国のゆくえ」がテーマ。地図上で見ればわかるとおり、スペインと国境が接しているのに国民の目は大西洋に向いていた。だからこそ、ヨーロッパ大陸には関心が及ばなかったのだという。
著者は1961年生まれで外語大卒業後に外務省入省。ポルトガル大使館専門調査員となったのち、上智大で教鞭をとっているとのこと。それだけに歴史をさかのぼった説明と同時に、現代の問題を考察している分量が多い。植民地について、政治について等々。ポルトガルの植民地への態度が他の西洋諸国とこんなにもずれていたことに、あらためて指摘されて気づいた気がする。たしかに遅れていたのだろう。現実に今、ポルトガルが置かれている課題を念頭に書かれている。
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