[NO.1249] 勝てる読書

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勝てる読書/14歳の世渡り術
豊崎由美
河出書房新社
2009年1月20日 初版印刷
2009年1月30日 初版発行

紹介されていた本を、読者がどれだけ手にとって読んでみたい気持ちにさせられたか。それが書評にとっての一番嬉しい評価ではないだろうか。その意味では当たりだった。ただし癖がある。

「14歳の世渡り術」というシリーズものの1冊だが、本書は書き下ろしではない。もともと初出が雑誌『文藝』2005年春号~2008年夏号に連載した原稿「見上げてみれば...--若い読者のための本の星座早見盤」に加筆したもの。とあって、対象とする読者がどうあっても14歳とは思えない内容となっている。細かくルビを振り、脚注を配置してはあるものの、出だしがいきなり『必読書150』( 柄谷行人・浅田彰・岡崎乾二郎・奥泉光・島田雅彦・すが秀実・渡部直己著、太田出版刊)である。14歳に向かって、これら7人の著書を1冊でも紹介するとして、いったいどれを差し出せばいいのだろうか。
『必読書150』関連として、M・ウェーバー、ソシュール、ヴァレリー、村上龍、サド、セリーヌ、バタイユ、モンテーニュ、レヴィ=ストロース、トマス・モア、ラブレー、イタロ・カルヴィーノ、ヴォルテール、ガッダ、村上春樹、カート・ヴォネガット、レイモンド・チャンドラー、フィッツジェラルド、レイモンド・カーヴァー、ヘミングウェイを紹介している。もちろん豊崎節全開で、著者名だけではなく代表作も挙げてあったが割愛した。ちなみに、『必読書150』でググると「必読書150のリスト ついでに 東大教師が新入生にすすめる100冊」なるサイトが出てきた。いやはや、なかなか見応えある100冊也。岩波文庫が並び、いわゆる教養書が多い。
で、『必読書150』の次に中心として挙げてあるのが、絶版なので古書価高騰中の高山宏著『ブック・カーニヴァル』ときた。ちなみに先ほどアマゾンで調べると、【中古品の出品:3¥ 18,480より】だそうだ。そして関連書の列挙が続く。
で、3人目が高橋源一郎ときて、なるほど。さらに、この第1章の最後は池澤夏樹『読書癖1~4』で締めとなる。ここでちょっと安心した。最後は平凡に終わったので。それに実はかつての愛読書だったし。『読書癖1~4』の4冊、どこに仕舞いこんだやら見つからない。あのみすず書房特有の白いシンプルな表紙。

各章立てなどの体裁は14歳向けと銘打ってあるものの、中身は大人向けなのだろう。いくら背伸びしたがる14歳であっても、いったい本書で紹介している本のうちでいった何冊を読みたくなるものやら怪しい。
しかし、こちらは14歳ではないので、いくらでも読みたくなってしまった。もちろん既読書もあったが、今からでも遅くはない。あらためて読んでみようと思わせられたタイトル多数。嬉しくなる。

第2章では本田透著『電波男』。なるほど、ちっとも知らなかった。出版された2005年といえば、そのころの興味が明治時代にどっぷり浸っていたからだろう。

第3章では笙野頼子著『徹底抗戦!文士の森』。こちらもやはり最近の小説を読んでいなかったために、こうしたできごとがあったことも知らなかった。笙野頼子が文壇(そんなものはとっくに消滅したとすれば、純文学の世界というべきか)と戦ったのだという。どうも豊崎氏は笙野頼子が好きみたい。それにしても河出書房新社サイト内の紹介ページが文字化け激しいのはなぜ?

途中略、第7章新訳座ではロレンス・ダレル『アレクサンドリア四重奏』の新訳が出ていたことを知り、儲けた気分になる。新刊書店にも足を運んでみる気にさせられたのは久しぶり。